氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

就職氷河期世代の悲惨物語を忘れた政治家たちの深刻

ある議員のXでの投稿に氷河期世代から多くの声が寄せられています。そこに綴られていたのは、就職氷河期をまるで忘れたかのような議員たちの態度だったからです。

今も当時の深刻な就職難が傷になっている40〜50代前半は少なくありません。

しかし政治家たちにとって、これは人ごとなのでしょうか。

2024年3月、伊藤たかえ参議院議員(国民民主党)はXにこんな内容の投稿を行いました。予算に関する反対討論の中で、就職活動中のエピソードを語ったところ、議場から吹き出す声などが聞こえたのだといいます。

「令和6年度予算三案に関する反対討論で本会議登壇。 冒頭『私が就職活動で100社もの会社に落ちた1997年…』と話し始めたら、議長席(?)で吹き出す声や、議場から『100社はむごい』とか『オレ全部受かった』とか、笑い声や話し声が色々耳に入って来て動揺し、めちゃくちゃ噛んでしまう」

この投稿では触れられていませんが、1997年が就活生にとってどういう時代であったのかは、40代以上であればすぐにピンとくるでしょう。  

1991年にバブルが崩壊し、それまでは売り手市場だった就職事情が激変しました。特に1993年から2005年頃までに就職活動をしていた世代が「就職氷河期」と呼ばれます。 

今では考えられないが、バブルの頃は企業が内定者を逃がさないように海外旅行に招待することもありました。これが一転したのが就職氷河期で、1991年に81.3%だった大卒の就職内定率は2003年には55.1%まで落ち込んだのでした。

1990年代中旬の就活生たちは、華々しく内定を獲得していた先輩の姿と自分たちとの違いに愕然としたでしょう。  

一流企業を狙うどころか、卒業までに就職が決まらない学生が珍しくなかった時代に辛酸を舐めたのが、今の40代〜50代前半(出生年は1970年〜1984年頃)です。

しかし議場には、この年代の議員が少なかったのでしょうか。もしくは二世議員は就職には苦労することがなかったのでしょうか。伊藤議員のエピソードに吹き出したり、「オレ全部受かった」と言った議員がいたりしたという様子を聞くと、政治家たちは氷河期世代の受難を忘れてしまったのかと言いたくなります。

庶民感覚の欠如と時代錯誤があります。的外れな政策が量産される温床にもなっています。

伊藤議員は3月31日に、今度は「就職氷河期」の言葉を使って、次のように投稿しています。

登壇すると議員の顔は全て見えます。寝るも笑うも呟きまでもよく聞こえます。 国会には就職氷河期の奮闘を笑う議員もいれば、少子化を『男と女がいれば子供は生まれるんだよ』と野次る議員もいます。 そういう課題認識の元で的外れな政策が量産されているのです。変えねば。次世代に申し訳が立たない」

庶民感覚のなさに無自覚だったり、的外れで時代錯誤なヤジを堂々と飛ばしたり。問題意識に欠けた議員こそが日本社会の「課題」なのでしょう。  

ちなみに伊藤議員自身は1998年にテレビ大阪に入社し、その後資生堂リクルートとキャリアを重ねています。女性は特に就職が難しかった時代において、相当の努力があったのではないでしょうか。 

さて、伊藤議員の「100社もの会社に落ちた1997年…」の投稿には、笑った議員たちに対しての様々な怒りの声が寄せられています。

多くは、議員たちは就職氷河期を知らないのかという憤りです。また数字を出して当時を振り返る人も見られました。  

1997年(1998年卒)は就職率(文部科学省・学校基本調査「卒業者に占める就職者の割合」)が全体65.6%、女子64.5%(2023年卒は全体75.9%、女子81.2%)。就職氷河期の初期で「100社もの会社に落ちた」は女子学生だとそこそこある話でした。

エントリーシートが通らず、面接に辿り着けた会社が数社のみだったり、大学名や性別で足切りされたり、が当たり前でした。

圧迫面接という言葉はまだあまり聞かれず、企業が高圧的でも入社を志望する学生は当然従順であるべき、という風潮が強かったように記憶します。  

また、氷河期世代の苦難を放置したことが、日本が少子化から抜け出せない結果につながったと見る意見もあります。

氷河期世代は、正規職員になれず、非安定就労に低賃金で苦しむことになりました。 氷河期世代は、本来なら、第三次ベビーブームが起きる世代のはずでした。

ところが、生活が安定せず、結婚、出産というライブイベントから遠ざかったのです。 その結果が、今の急速な少子高齢化の大きな原因になっています。

正規雇用の割合が突出して増加したのは1998年からの5年ほどで、これは就職氷河期とも重なります。

言うまでもないことだが、企業は業績悪化を非正規雇用による人材費削減で乗り切ろうとしたのです。  

結果としてワーキングプアが増大しました。

働けど働けど、お賃金が増える未来が予想できない当時の20代は、結婚や子育ては「贅沢」だと感じるに至り、この傾向は今も続いています。  

政治家たちはたびたび少子高齢化を嘆いて見せますが、その一因と指摘される氷河期世代ワーキングプア問題に策を講じてこなかったことをどう考えているのでしょう。

氷河期世代を 代弁する議員は現れるのでしょうか 。

内閣府氷河期世代を「人生再設計第一世代」と捉え、その再チャレンジを支援すると唱ったのは2019年でしたが、この世代がアラフォーを迎えてからのこの取り組みは遅すぎたのではないかと思わざるを得ません。

「人生再設計第一世代」が提唱された時期にも、氷河期からの反発は強かったのです。「自分たちの世代は政治から見捨てられた」と感じているこの世代からしてみれば「バカにしているのか」としか思えなかったでしょう。  

そして今回もまた、国会議員たちのあんまりな反応に、見捨てられた世代の人々がざわついています。  

この世代の代弁者となる政治家を選挙で当選させたいと願うところですが、骨のある叩き上げ議員候補はどれほどいるでしょう。

自民党総裁選でもこのことを公約している人は一人もいませんし、そもそも氷河期世代の国会議員も少ないのではないでしょうか。出ていても氷河期世代の勝ち組でしょう。負け組の気持ちがわかる政治家などいないに等しいのです。

伊藤議員の投稿は7000回近く再投稿され、1.8万件の「いいね」がついています。これほど共感を集める話なのですから、各政党は一人ぐらい、氷河期世代の救済を公約に掲げる候補者を立ててほしいものです。

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