熱中症の患者数は年々増えていますが、実は熱中症は正しく予防すればゼロにできる唯一の病気なのです。日本でも、予防医学の考えが広まってきていますが、がんや糖尿病の発症をゼロにすることは不可能です。
しかし、熱中症は、きちんとした予防策をとれば、発症をゼロにすることも夢ではありません。多くの病気は発症してから治療するのに対し、熱中症は予防に重点をおくべき病気といえます。
熱中症は、命を落とすリスクや、助かったとしても後遺症が残る可能性もある油断できない病気ですが、命に対する影響だけでなく、社会的な影響も考えてみましょう。 熱中症で救急車を呼ぶと、1台で5~10万円の税金が使われます。
熱中症が重篤化して集中治療室での治療が必要になると、1日あたり数十万円の治療費がかかります。何よりも、熱中症で病院を受診する患者さんが増えることは、熱中症以外の診療の妨げにもなってしまうのです。熱中症の予防策は、きちんとした指導を受ければ、誰もが効果的に実践できるものばかりです。
しかも、予防策は決して難しいものではなく、誰でも簡単に実践できます。自分の命を守るため、社会的な問題を少しでも緩和するためにも、自分たちでできるところから始めることが大切です。
【熱中症予防の食生活:朝】 夏は朝ごはんがとくに重要 真夏の食事で重要なのは、まず朝ごはんをしっかりと食べることです。
3食食べることは年間を通して大事ですが、夏はとくに朝ごはんを食べることが大切になってきます。 朝ごはんの役割は大きく3つあり、朝の水分補給と自律神経の活性化、暑いところに出る体力をつけることです。
私たちの体で活動を支えてくれるステロイドホルモンが分泌される時間が、午前10~11時といわれています。体が最も活動的になる午前10時ごろに備えて、朝ごはんで栄養と水分が十分体に補給されている状態が理想的です。
バランスのとれた朝ごはんで栄養と水分を補給して胃腸を動かすことで、自律神経を活性化させましょう。朝ごはんが食べられなかった場合は、普段の水分補給に加えて、500mlほど追加して水分補給することが必要です。
食事では塩分も一緒にとっているので、追加の水分補給は、水やお茶よりも塩分を含んだスポーツ飲料がおすすめです。 子どもは水分を失いやすく、高齢者は食事量が減りやすいので、とくに意識して朝ごはんを食べるようにしてください。
夏本番になってからの食事は、水分とミネラルを意識するとよいでしょう。ミネラルのなかでも、カリウムは尿を出しやすくする作用があるので、体温を下げることにつながります。水分やミネラルは、果物やトマト、きゅうり、カボチャなどの夏野菜に多く含まれています。
旬の食材を使った料理は、美味しくて栄養が豊富なだけでなく、熱中症予防にも役立つのです。 ビタミンについては、暑熱順化を促すビタミンCに加えて、疲労回復に役立つビタミンBも意識してみてください。
ビタミンBを多く含む食材で身近なものは、豚肉です。水分とミネラル、ビタミンBをまとめてとれるメニューとして、夏野菜カレーなどが手軽でよいと思います。寝る直前に食事をすると、寝ている間も胃腸が働いている状態になり、体が十分に休まりません。満腹感が気になって眠りにくくなることもあるでしょう。
消化が完了するには4~5時間かかるので、胃腸を完全に休めるためには寝る5時間ほど前に食事を終わらせるのが理想ですが、それはあまり現実的ではないですよね。せめて寝る2時間前には食事を終わらせて、胃の中を空にした状態で床につくようにしましょう。
また、寝る前の水分補給も大事です。 寝る前に水分補給をすることでトイレが近くなってしまうのが不安な人もいるでしょう。加齢とともに夜中のトイレは増えるので、高齢者ほど寝る前の水分補給は控える人が多いかもしれません。
しかし、まったく水分補給をせずに寝るのはおすすめできません。寝ている間も汗や皮膚、呼吸などから水分が体の外に出ていくので、脱水症になってしまう可能性があるからです。寝ている間の脱水症は、熱中症を引き起こすだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの病気につながってしまうおそれもあります。
水分補給の仕方を工夫することで、お腹への負担や夜中のトイレを心配することなく脱水症を予防できます。寝る前に水分補給をする際のポイントは8つあります。
1、寝る前の水分補給は150ml程度の少量にする
2、一気に飲まず、5分ほどかけて飲む
3、水分は常温か、やや温かいものを飲む
4、水分の種類は白湯かカフェインの含まれていない麦茶などにする
5、可能であれば、夜中に目が覚めたときに再度水分補給をする
6、起きてすぐにも、寝る前と同様の水分補給をする
7、トイレが近くなる場合は、寝る前に飲む量を150→100→50mlと減らす
8、50mlでもトイレが近くなるようであれば、泌尿器科を受診する 上記8つのポイントに留意して、寝ている間の熱中症を予防しましょう。
暑さで食欲が落ちてしまいがちな夏ですが、食事は質だけでなく十分な量を食べることも大切です。まずは3食バランスよく食べることを心がけましょう。