氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

飲食店経営に手を出したら、その先には「地獄」が待っている

定年退職したら、趣味もかねて手打ちそば屋でもやりたいな…。
そんなことを考えている人は、ちょっと待って欲しいです。
脱サラや退職を機に、飲食店をはじめたいと思っている人は、後を絶ちません。
自分好みに味付けした食事を出す店や、居心地の良い空間を作りたいと思い、飲食店経営を安易にはじめてしまう人も減りません。
なぜなのでしょうか。
飲食店経営の厳しさを語る人がほとんどいないからです。
外食は箱ビジネスであり、立地に左右され、簡単に動くことができないのも、戦いを厳しくする大きな理由の1つです。
隣に新しい競合店ができても、その場で戦い続けなければなりません。

また、その界隈に同様の店が乱立してしまえば、新しいもの好きの人々はそちらに行ってしまうでしょう。
一度流行りのイタリアンが出来れば、「この地域はイタリアンが流行る」と評判がたち、似たような店が乱立する…これも思い当たるところがあるでしょう。
飲食店を作ってしまえば、消耗戦が余儀なくされる。
実は、欧州などはこうした過当競争を避けるため、厳格にライセンスビジネス制を敷くなど、行政が参入障壁を作っています。
たとえば、ストリートごとにアルコールを提供できる店舗数を決めており、その提供時間なども22時までとか、0時までとか取り決めがあります。
また、火を使っていい店舗やダメな店舗というライセンスも店舗ごとに付与されています。

飲食店としては、アルコールの提供ができなければ利幅が小さくなるし、火を使えないとメニューの幅が狭くなるので、これらのライセンスが付与されたストリートの場所取りが激しく行われています。
ロンドンやパリでは、この営業権と呼ばれるライセンスの争奪戦が過熱していて、人が集まる繁華街で飲食店を開設しようとすると、数億円を超える営業権を購入しなければならなかったりします。
善し悪しあるが、相応の体力がなければ始められないということは、「やってみようかな」という程度の考えの人の参入を防ぐことにつながっています。
一方日本は、このような参入障壁がない上に、コンビニやスーパーの惣菜など、他業界との競合も多いことから、利用者が飲食店に求める味のレベルは高くなり、提供価格は驚くほどに安いのです。
いや、利用者にとってはいいことなのだが、飲食業者にとっては、厳しい条件が2つものしかかってきます。

他業界も含めて、強豪ひしめくなかで勝ち続けるためには、その場の雰囲気や料理やお店のストーリーを大切にしていかなければいけません。

例えば、宮崎の地鶏を自社の養鶏場から直送し、中間マージンを排除することで、「いいものを安く食べられる」という触れ込みで店舗を拡大した「塚田農場」を想像いただきたいのです。
宮崎、地鶏、産直…これらを分かりやすくイメージした「農家風の店舗」というストーリーを利用者に提示し、快進撃を続けてきました。
ところが、2012年からモンテローザグループが「山内農場」という、非常に似通ったブランドの店舗を増やしていくなど競合が増加すると、塚田農場の既存店売上高は33ヶ月連続で前年度を下回る形となりました。

つまり、お客さまが感動するストーリーやプレゼテーションが集客には必要ですが、それらは特許のような形で保護できるものでもないので、模倣されやすいのです。
実は、この模倣こそが飲食店ビジネスの難点なのです。
また、消費者は基本「新しもの好き」です。
新業態のなかでも定着するのはほんのわずかであり、飽きられる前に新業態を展開していかなければならない、という苦しみに追われ続けることになります。

ゲリラ戦のような戦いを強いられる日本の飲食業界ですが、これに追い打ちをかけるのが、人材確保の問題です。
人口減少社会に突入し、全業種において人材確保が難しくなってきているなか、「低賃金」「重労働」などブラックな印象が強くなっている飲食業界は、アルバイトの採用において大きなビハインドを背負っています。

そのようななか、アルバイト代を浮かすために、正社員として採用した従業員をサービス残業で働かせ、FL比率を下げる…というのが業界としての「ならわし」になってきています。
それが現実なのです。
とはいえ、個人で飲食店を経営する場合、新たに「正社員」を雇う余裕はありません。
家族や知人が働いてくれればいいが、あなたの店で働いてくれる人が頭の中に何人浮かぶでしょうか?

浮かばない場合は求人を出さなければなりません。
求人を探すコストがどれだけかかるかご存じでしょうか…?
飲食業は、市場環境をみればゲリラ戦のような状況で、血を血で洗う戦いが繰り広げられてます。
ビジネスは戦争だというが、最も激しい戦闘が繰り広げられているのが、飲食業界なのです。

そこで勝ち残るためには、武器となる食材や兵士となるスタッフはもちろん、ノルマンディーを攻略するような見事な作戦…つまりは時流にそったコンセプト作りやストーリー作りが大切なのです。

さらには、どういう形で利益をあげるのか、原価率をどう下げるのかを考え抜いたビジネスモデルの構築も必要な上に、商売の状況は日々移り変わりゆく水商売です。
ミスのない在庫管理や原価計算などがとても重要です。
設備投資にも多くのカネがかかり、箱ビジネスなので移動することもできないという外部環境に依存することから、自助努力では対応できないリスクもあります。

飲食業は、経営学の本に載っているフレームワークを全て詰め込んで、ようやく土俵にあがれるような、極めて困難なビジネスなのです。
料理に自信があるからといったぐらいのことでは、どうにもなりません。

脱サラや退職金で、趣味程度にはじめるような気軽さは許させる余地がないということです。
今日もまた、全国の各地で飲食店がつぶれ、そして新たな「廃業予備軍」が誕生しています。
その姿をみるたび、飲食業界の難しさを知り、その実態を伝えていなかければ、と思います。

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