氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

日本を襲う「絶望の人手不足」と「若者の海外逃亡」の厳しすぎる現実

日本は2023年になって、大企業が相次いで大幅な賃上げを表明し、経済の好循環が生まれそうだと考える専門家が多くなっています。

大企業が大幅な賃上げに動いた背景には、優秀な人材の争奪戦が顕在化してきたということがあります。

とりわけグローバルに事業を展開する企業では、海外企業になるべく劣らない賃金を払うことによって、できるだけ多くの優秀な人材を確保しようとしているのです。

それに加えて、国内では人手不足が深刻化しているため、大幅な賃上げをしなければ人材が他社に逃げられてしまうという厳しい現実もあります。

とくに近年では、賃金をなかなか引き上げない企業は新卒学生から見向きもされない傾向が高まっているというわけです。

それと並行して、雇用者全体の40%近くを占める非正規社員の処遇の改善も進んでいます。ファーストリテイリングはすでに2022年に、国内でのパートやアルバイトの時給を平均で20%引き上げました。

 

 

イオンは2023年4月から、パートの時給を平均7%引き上げています。 正規社員と匹敵するパート・アルバイトの賃上げは、国内での人手不足が尋常でない水準にまで達してきたことを裏付けています。

世間で物価高が叫ばれているなかで、従来の処遇のままでは従業員を引き留めることができなくなってきている証左といえるでしょう。

こうした大企業の賃上げは、世間では好感をもって受け止められています。

日本が「値上げ」と「賃上げ」を行うことで経済の好循環が生まれようとしていると、考える専門家も少なくはありません。

しかし、現実には景気の悪循環に陥りかねない事態も同時に進行しているのです。

大企業が大幅な賃上げを行う一方で、中小企業の賃上げにも期待が集まっていますが、その中小企業は厳しい条件下で思うような賃上げができないのです。

その帰結として、大企業と中小企業の間では、かつてないほどの「賃金格差」が広がろうとしています。

日本全体の企業数の99.7%が中小企業であり、従業員数の68.8%が中小企業で働いています。

中小企業で大企業と同じ水準の賃上げが行われなければ、経済の好循環を達成したとはいえないでしょう。

現状では、中小企業は過酷な現実に直面しています。 大企業が商品・サービスに対する価格転嫁を着々と行っているのとは対照的に、多くの中小企業では大企業との値上げ交渉が思うように進んでいない状況にあります。

立場的に弱い中小企業ほど、原材料高のしわ寄せが集中しやすい商慣行が未だにはびこっているのです。

 

 

3ヵ月ごとに日銀が公表する短観によれば、中小企業は大企業から厳しいコスト削減を突きつけられる傾向が強いようです。

とくにエネルギーや資源の価格が上昇している局面では、大企業との価格交渉ができないので自社の賃下げを迫られるケースが後を絶たないという事実が明らかになっています。

中小企業の賃上げ原資となる価格転嫁が遅れているなかで、中小企業にも4月以降、大企業と同じく時間外労働の割増賃金が適用されるようになりました。

多くの中小企業は事業の存続を考えると、物価高を埋めるほどの賃上げには容易に踏み切れないというわけです。

「賃金格差」はすでに臨界点 日本商工会議所の調査によれば、賃上げを実施できる中小企業は全体の60%未満にとどまり、賃上げ率は2%程度になる見込みだといいます。

足元の物価上昇率は4%台から3%台に低下しているとはいえ、5月上旬まで続く中小企業の労使交渉での賃上げ率は物価上昇分を下回る可能性が高いといえそうです。

その結果、大企業と中小企業の賃金格差はいっそう拡大することになります。

もとより、中小企業の賃上げ率は官製春闘が始まった2014年以降でみても、大企業をずっと下回って推移してきました。

おそらく今後は、中小企業の人手不足による倒産増加が避けられそうもありません。

 

 

過去10年を振り返ってみると、生産年齢人口が加速度的に減っているとはいっても、女性や高齢者、外国人の雇用が増えることで何とか人手不足を補ってきました。

しかしながら、2025年には団塊世代の高齢者がすべて後期高齢者となる見通しですし、外国人も円安による収入の目減りによって、日本で働くモチベーションが低下しています。

中小企業にとって未曽有の人手不足が訪れることは間違いなさそうです。

政府は中小を見捨てたのか… ひょっとしたら政府は、大企業と中小企業の賃金格差を拡大することで中小企業を淘汰し、生産性の向上を目論んでいるのかもしれません。

ケインズの師匠であったケンブリッジ大学アルフレッド・マーシャル教授は、学生たちをロンドンの貧民街に連れて行き、そこで暮らす貧しい人たちの生活を見せたうえで、「経済学者になるには、冷徹な頭脳と暖かい心の両方が必要である』と教え諭したといいます。

政治家や専門家のなかには「まず中小企業を大淘汰して、生産性の向上を計るべきだ」という主張を展開する人たちが少なからずいます。

こういう主張をする人たちは、冷徹な頭脳ばかりが発達してしまい、人としての心や感性が鈍くなっている気がしてなりません。

仮に中小企業の淘汰が始まるとしたら、真っ先に職を失うのはスキルに乏しい人たちです。

そこで政府に求めたいのは、そうした人たちをスキルの取得も含めて再教育し、社会に戻していくシステムを一刻も早く整備しなければならないということです。

政府にはマーシャル教授の教えを深く心に刻み込んでもらいたいところです。

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