何よりも、タワマンは普通のマンションに比べて居住性がかなり劣ります。その最大の欠点は「隣戸の生活音が聞こえてしまう」ことです。
逆に、こちらの生活音も隣戸ばかりか下階の住戸に漏れています。
あまり知られていないことですが、一般的な板状のマンションとタワマンとは、構造的に「似て非なるもの」です。
住戸周りの構造が大きく違うのです。
板状マンションの場合、住戸と住戸の間に鉄筋コンクリートの壁で隔てられていますが、タワマンの場合は「乾式壁」という、やや分厚いパーテンションで仕切られているに過ぎません。だから隣戸の生活音が聞こえたりします。
タワマン住民は多忙な方が多いので、自宅での滞留時間が少なかったのですが、コロナによるテレワークが浸透すると、多くの人が、隣戸の生活音がそれなりに聞こえてくることに気付いたようです。
中には、薄い戸境壁の向こうから聞こえてくるユーチューブの音がうるさくて気が散り、隣に怒鳴り込んだケースもあったといいます。
さらに、上階からの振動音も響きやすく、タワマンでは建物の荷重負担を軽減するため、床スラブの中に空洞を設ける「ボイドスラブ工法」を採用しています。
この工法は、マニュアル性能では通常のスラブに比べて強度も遮音性も「遜色ない」とされていますが、タワマン住民からの騒音や振動の苦情は、板状型に比べて多いのです。
2020年末に財閥系デベロッパーが開発したタワマンの欠陥騒動が発覚しました。
そのタワマンでは「上からも下からも隣からも、騒音がひどい」という苦情が頻発していたといいます。タワマンに住むと騒音や振動に悩まされる確率が高まると思います。
高齢者になってからはタワマンに住まない方がいい、とされる理由のひとつに、救急隊の到着と搬送にかかる時間が挙げられます。
119番をしてから救急隊が駆けつけ、搬送を開始して病院に到着するまでの時間は、近隣の戸建てに住んでいる場合に比べて最低でも20分前後は長くなります。
救急隊はオートロックやエレベータ、廊下を通過してからようやく助けを求める住戸に着き、また同じルートで患者を運び出さねばなりません。
カナダのある研究機関の報告によると、救急隊が高い階から搬送した場合の生還率は限りなくゼロに近くなっています。
欧米の富裕層が高層階に住みたがらない理由のひとつは、こういうところなのでしょう。
ところが日本では、なぜか階層が上がるほど家賃や資産価値も高くなっていくという「珍現象」が起こっています。
さらに、タワマンは災害にも弱く、電力が供給されることが大前提の集合住宅だからです。
電力供給が途絶えると、エレベータばかりかトイレも使えなくなります。それは2019年の台風19号で、神奈川県川崎市の武蔵小杉の某タワマンで発生した悲劇が物語っています。
例えば大きな地震によって電力供給が途絶え、エレベータが使えなくなるとタワマンの高層階では生活できません。
しかし多くの場合、行政側はタワマン住民のための避難所を想定していません。なぜなら、エレベータやトイレが使えなくなっても、それは命の危険にまでは直結しないからです。
タワマンに住むデメリットは他にも
・三半規管の弱い人には健康被害を招く可能性が大きい
・敷地外に出るまで時間がかかる
・タワマンに住む小学生は成績が伸びないという指摘がある
・大規模修繕には板状の2倍程度のコストがかかる
実はタワマンには、資産価値の点から見て決定的な欠点があり、建造物としての「出口戦略」がないのです。 これはタワマンに限ったことではなく、日本の区分所有マンションというのは、現在のままでは近々解決しがたい問題にぶつかります。
日本で「マンション」と呼ばれる集合住宅のほとんどは鉄筋コンクリート造(RC)で、RCには必ず朽ちる時が来ます。
その寿命は普通に考えて50年から100年、長くても200年でしょう。
日本ではRCで築60年以上の建物はほとんど存在しないので、このあと何年もつのかは、なってみないと分かりませんが、最後は必ず朽ち果てます。
その理由は、RCは鉄とコンクリートでできているからです。コンクリートの寿命は数百年程度はありそうだが、それに包まれている鉄は必ず腐食し錆びます。
鉄は錆びると膨張し、まわりのコンクリートを破壊します。そこから空気や雨水が浸み込んで、さらに錆が進行します。
やがてRCの建物は住むには危険すぎるほど朽ちるのがマンションの運命です。
パリやローマにある石造や煉瓦造の建物は200年でも1000年でも壊れません。
しかし、地震大国の日本で高層建造物を作る工法は、今のところRC以外はほぼあり得ません。
したがって日本のRC区分所有のマンションは、いずれこの問題をどう解決するかを迫られる。中でもタワマンの場合は、普通の板状マンションに比べてかなり厄介です。
マンションには「建て直す」と「取り壊す」という2つの出口があり、どちらも現在の法律では区分所有者の5分の4の賛成が必要になります。
現在、この要件を4分の3に緩和しようという動きがありますが、要件を満たしても、次にお金の問題が発生します。
取り壊すには普通の板状マンションで1住戸につき数百万円が必要。タワマンの場合は、ほとんど事例がないので、いくらかかるか分かりません。
多分、今の貨幣価値にして1戸当たり1000万円が必要になり、建て替えにはさらに1住戸あたり2500万円程度の負担が発生します。
解体費用1000万円+2500万円=3500万円を全住戸の区分所有者が負担する、などということは不可能に近いのではないでしょうか。
都心では「建て替え事業」が行われていますが、あれは建て直すと住戸が増える場合です。
50戸のマンションを建て直して100戸にできる場合、新たに生まれる50戸を新築マンションとして分譲することで、建て直した旧50戸分の建築費や解体費が出るような場合に可能なケースです。
タワマンの場合は、建て直したら戸数が増える、ということはあり得ない。つまりタワマンが朽ちる時には、今の法制度では「取り壊し」の一択しかないのです。
そもそもタワマンとは、限られた敷地に多くの住戸を作るための便宜的な集合住宅であり、欧米の人々の一般的な感覚はそういうところにあります。
彼らには、高い階層の住戸に住むことによるステイタス感などは生じません。
むしろ、それを嫌がる感覚が平均的でしょう。
しかし、多くの日本人は高い階層の住戸に住むことになぜか「カッコいい」とか「ステイタスの証」といった不思議な捉え方をしています。
高い階層に住めば、マンションから外に出るまで時間がかかり、心臓発作や脳梗塞になった時の生還率が低く、地震などで電力供給が停まった時には恐ろしく不自由で、子どもの学力が伸びない可能性すらあるのです。
多くの日本人は、そういうマイナス面には一切目をつぶって高い階層に住みたがり、そこに資産価値まで見出してしまいます。
多くの新築タワマンの価格は低層階よりも高層階住戸の方が面積割合でかなり割高です。
もちろん、タワマン高層階に住んで満足している方にとっては、それはそれで良いことです。
しかし、彼らの多くはここで指摘したようなタワマンの真実に気が付いておらず、こんなにデメリットの多いタワマンという集合住宅は、イギリスの低所得者向け住宅のように「やむを得ない」場合にのみ建設すべきです。
日本のような地震大国で、いずれ壊さねばならない工法で、あのような異形な建造物を都心エリアに大量に建設するのは、我々の次世代や孫世代に大きな負担をツケ回しているだけです。
それを考えた場合の身近な解決策は、これ以上問題の多いタワマンを増やさないことです。
それでもタワマンを作る場合は、賃貸にすべきです。いつかは取り壊さなければならないのなら、権利関係が複雑になる区分所有方式よりも、ワンオーナーの意思と財力で取り壊しや建て替えができる賃貸がふさわしいのです。
今の区分所有法が改正されないと、50年後には廃墟化するタワマンが大きな社会問題となります。