国民の全所得に対する税金と社会保障負担の合計額の割合である「国民負担率」が上がり続けています。
細かい増減はあるものの、増加傾向は何十年も続いています。だからといって、かつてより福祉が充実している実感もなく、使えるお金も減り続け、日々の生活が苦しくなったと感じている人の方が多いでしょう。
令和5年度の国民負担率を公表します。令和5年度の国民負担率は、46.8%となる見通しです 国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、53.9%となる見通しです。 令和5年2月21日、以上、財務省のホームページに掲載されている一文です。
見ての通り国民負担率の発表ですが、2023年度の国民負担率は46.8%、潜在的国民負担率は53.9%の見通しです。
ホームページには財務省のロゴの下に「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」というキャッチフレーズが添えられています。
またFacebookの「いいね!」ボタンもあるが、なんだか「いいね!」しづらいような。Twitterのツイートボタンもあるのでたどると「五公五民」「生かさず殺さず」「収入の半分なくなる」といった声が並びます。
2022年から他の取材と並行して「手取りが減った」「使えるお金が減った」「貯金ができなくなった」といった声が多くなっています。
とくにサラリーマン(以下、被雇用者の総称として便宜上使う)が厳しいように思います。
日本の正社員の平均給与は508万円、正社員以外で198万円(国税庁・2022年度)ですが、年々使えるお金が減っているために生活を「レベルダウン」するサラリーマンも増えています。
とくに中高年層は昼食を切り詰め、趣味を控え、生活の見直しを図らざるを得ない状況に陥っているケースが散見されます。
わずかな昇給では追いつかないほどに。実際、大手自動車系調査機関の調べ(2022年)でも「生活が苦しくなった」と答えるサラリーマンは7割を超えました。
振り返れば、1970年代の国民負担率は20%台、1990年代から2000年代にかけても30%台でした。
とくに50代の意見として「1990年代とくらべて稼いでいるはずなのに、使えるお金が減っている」という意見がありました。
「独身だったことを差し引いても、あの時代のほうが無駄に使えた」ともいえます。
2013年から40%台となり、徐々に悪化を始めました。コロナ禍などの影響があったにせよ、2020年代には国民負担率48.1%(2021)、潜在的国民負担率62.9%(2020)といずれも最高値を記録しています。
江戸時代の負担になぞらえれば「五公五民」どころか「六公四民」です。
ちなみに「六公四民」は年貢率60%なので一揆が起きると敬遠されることもあった徴税率です。
これらはあくまでも例え話で時代や藩にもよるし、年貢は米が中心だったので他の仕事で生活防衛を図っていました。
重税で苦しいから米以外の作物を作ったり狩猟をしたり、民芸品を作るなどの「副業」で生活防衛というのは、これまた現代の「サラリーマンも副業しよう」と同じでしょうか。封建時代に戻ってしまったみたいです。
増税、物価高、社会保障の負担増、そして電気やガスの高騰が家計を襲っています。
一般的には収入源の限られたサラリーマンにとって、「増やすより減らす」というレベルダウンが年収の低い順、生活に金のかかる順に襲ってくる時代、子育てはもちろん、単身者にも中高年ともなると親の介護問題、それどころか自分の健康問題も襲いかかります。
そもそも自身の老後に備えた貯金だって必要です。
調査によっても上下しますが、最低でも老後資金は2000万円(金融庁、2019年)必要とされています。
「レベルダウン」による生活が怖いのは、不意の出費に対応しきれなくなる恐れがあることです。
単身者ならまだ「自分が我慢すれば」ですが、家族持ちならそうはいきません。
普通に生活しているサラリーマンの「使えるお金が減る」「レベルダウン」もまた、将来的な中間層の減少と将来的な子ども世代への負の引き継ぎになりかねません。
2012年の厚生労働白書にはすでに『貧困・格差の現状と分厚い中間層の復活に向けた課題』とありました。
2023年、10年以上経っても課題どころか悪化してしまったのです。
いわゆる令和版『所得倍増計画』を掲げる岸田首相、2023年の年頭記者会見でも「格差の少ない力強い成長」「物価上昇率超える賃上げの実現」「新しい好循環の起動」を国民に訴えたが、その言葉とは裏腹に国民負担率は増え続け、物価やエネルギー高に対応するはずが増税ばかりとちぐはぐな現状があります。
もちろんサラリーマンだけでなく、多くの自営業者や年金者も同じような苦しみを味わっていますが、日本は労働者の80%以上がサラリーマン(被雇用者)です。
彼らの使えるお金が減ること、中間層の「レベルダウン」はそれこそ岸田首相の目指す「異次元の少子化対策」の足かせともなるでしょう。
このままでは「所得倍増」どころか「所得半減」になりかねません。
というか「使える金が減っている」という観点だけで言えば、実質そうなっているように思います。
それにしても、平均賃金が30年間も上がらなかったにも関わらず、本当に「何をするにも今まで以上に金のかかる国」「使えるお金が減り続ける国」になってしまいました。もはや猶予はないように思えます。