氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

出生数の稼ぎ頭=地方の非エリート非正規女子をほぼ無視、少子化対策で東京の高学歴女子ばかりが利する

日本の大学進学率は上昇しています。特に女性は1984年の12.7%が2021年には51.3%に達しましたが、地域差も大きく、2021年調査で「東京74.1%、鹿児島34.6%」という倍以上の格差が残っています。

鹿児島など女子の四大進学率が低い県では、「女子は四大ではなく、短大や専門学校進学率が進み、看護、保育、医療技術系など手に職がつく専攻が人気」と説明されています。

入社試験に四大卒が必須とされるようなホワイトカラー職は東京に集中しているので、就職や資格に直結して早く働ける短大や専門学校への進学は、地方女子高生にとって今なおフツーの進路です。

また、地方には終身雇用・年功序列が保証された職の絶対数は少なく、数少ない公務員・地銀などの安定職は男性優先になりがちです。

 

 

女性が結婚や出産で新卒時の職を退いた後は、契約社員・パートでの再就職か自営業となるケースが多いのです。

職種でいえば「食品工場」「介護士」「夫婦で工務店」など、東京の高学歴“キラキラ”女性にとっては視野にすら入らないエッセンシャルワーカー職が大部分です。

「育休中リスキリング」を発案したのも、おそらくは高学歴のエリート女性官僚かもしれません。

それはいいのですが、日本の現役世代(20~65歳)の女性の過半数は非四大卒であり、日本人の大部分は地方住民でもあります。

地方のエッセンシャルワーカーにとっては、「育休中の学び?学位?それで私の給料上がると思えないんだけど」「2年も休んだら店が潰れる」とズッコケたのが本心ではないでしょうか。

MBAUSCPAも履歴書にぜひ書き入れたい肩書になるでしょうが、東京都内であっても学位や資格を活用できる職が多数あるとは思えません。

地方ならばほとんど無意味でしょう。

リクルート女性社員は「同期男性ほど出世できなかった」と元職場を腐していましたが、そもそも地方には「育休2回取得して、その後の時短も取得できる大手民間企業」というのが極めて少ないです。

よって、SNSではこの女性の意見に同情したり賛同したりする人がいる一方で、「超絶ホワイト」「6年3カ月もサポートできるリクルートすごい」といったコメントも少なくなかったのです。

同世代女性でも職種や地域によって出生率に大差があることを実感します。

 

 

例えば、群馬県の食品工場だと100人中「子供ゼロ5名、1人20名、2人50名、3人20名、4人以上5名」のような分布なのが、東京都内の有名企業だと「子供ゼロ50名、1名40名、2人10名、3人以上ゼロ名」のような体感値です。

都道府県別の出生率でも「平均年収トップの東京都が出生率最低(2020年=1.13)」「年収最下位の沖縄県出生率最高(同=1.86)」と格差が生じていますが、それを目の当たりにした印象です。

結局のところ、日本の出生数を稼いでいるのは、地方の非エリート非正規女性なのです。

しかしながら、彼女らの声が各種メディアに積極的に取り上げられるチャンスは少ないです。

一方、数の上では少ないですが影響力が大きいのが東京のエリート女性です。

政府の女性支援○○会議などに参考人として呼ばれるのは、「東京在住、有名大卒、さらに大学院や留学、公務員・大企業正社員・大学教官」などが典型例です。

言動を見る限り、彼女たちの視界には地方の非正規女性の存在はありません。

その主張内容は、正社員就職を前提に「育休延長を」「男性育休も」「時短取得しても給料や昇進を可能に」といったものです。

そして、育休・育児時短のような制度が自分の職場に普及すると、「女性管理職・女性役員・女性教授を増やせ」とアピールしていくこと自体は間違っていません。

ただ、「自らの立場をより有利にする」ことに腐心し、「地方や非正規女性にも育休延長などの制度を広げる」ということには思いがいたらないことが多いように感じます。

日本の代表的な女性支援制度を正社員・非正社員(派遣社員契約社員)・自営業別にまとめてみると、正社員とそれ以外の格差が大きいです。

同じ日本国民なのに、出産前後の金銭的支援制度は正社員が圧倒的に多く、保活も有利です。

社会保障費免除も正社員は最大2年間ですが、自営業は4カ月で、5カ月目以降は保障費を払って育休正社員女性を支援する側に回らねばなりません。

近年では少子化対策との名目で「2人目保育料無料の認可保育園」が増えていますが、そもそも1人目を認可園に入れられなかった非正規女性には意味のない制度です。

社会保障とは基本的には「恵まれた人→恵まれない人」への支援のはずですが、女性支援や子育て支援に関しては、「恵まれた正社員女性がさらに支援され、それを不安定雇用の非正規女性が支える」という格差拡大のような構図となりやすいのです。

 

 

そして、「出生数を稼ぐ地方の非正規女性」を養分にして、「あまり生まない東京の正社員女性」を支援するシステムは、トータルでは少子化を加速するでしょう。

2022年4月、菅義偉前政権の置き土産となった「高度不妊治療の保険適応拡大」が開始となりました。

東京都内の不妊治療専門クリニックでは新規患者が前年比1.3倍になり、経済的理由で体外受精を躊躇していたと思われる20~30代の若いカップルが増えているので、「高い妊娠率が期待できる」と新潟県の医師がインタビューに答えています。

また、この「体外受精の保険適応」は雇用形態や住所に関係なく日本中の女性をカバーする支援制度なので、少子化対策として期待できそうです。

2013年には「少子化危機突破タスクフォース」として、男女各2名の産婦人科医を含んだ内閣府の会議がありました。

その議事録を確認すると「3歳になるまでは、男女とも育児休業可能に」「全上場企業において、役員に一人は女性を登用」のような、正社員前提でなおかつ「恵まれた女性がより恵まれる」的な提言が目立ち、残念ながら「体外受精の保険適応」については発言が全く無かったのです。

2013~22年の間、体外受精による出生数は年間3万~6万人で、年々増加傾向にあります。

2013年の会議で、4人の産婦人科医が「体外受精の保険適応」を強く主張し、2015年ごろから制度が始まっていれば、「患者数1.3倍」を参考にすれば、今頃は「10万人」レベルの出生数増加が期待できたかと思います。

日本の少子化は深刻化しており、その対策は待ったなしですが、非大卒/非東京/非正規女性を包括する制度を設けることが、有効な少子化政策への道となるでしょう。

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