いまはゼロ金利時代で、銀行預金の金利はほとんどゼロですが、時として銀行が高金利の定期預金を受け入れることがあります。
「キャンペーン期間中なので、投資信託を100万円購入してくれた方からは、100万円の3カ月定期に4%の金利を付けます」といった具合です。
銀行は、ゼロ成長時代で貸出が増えず、ゼロ金利時代で預金部門のコストが負担になり、苦しい時代が続いているため、投資信託や保険の販売に注力して手数料を稼ごうとしています。
そのため、こうしたキャンペーンを打つことも多いわけです。
ここで気をつけなければならないのは、銀行等の金利表示は年率表示だ、ということです。金利4%というのは、1年間預けていれば金利が4%付く、という意味なのです。
したがって、元本が100万円で金利4%の10年定期であれば、毎年4万円ずつ、合計40万円の金利がもらえますが、3ヶ月定期だと4万円の4分の1の1万円しかもらえないのです。
しかも、利子には所得税がかかりますから、源泉分離課税の場合、手取りは8,000円弱となってしまうわけです。
一見すると凄そうな「おまけ」に釣られて投信を購入したら、購入時手数料を3万円とられて、差し引き2万2,000円の出費になってしまった、といったことになりかねないわけです。
もちろん、最初から100万円の投信を買うつもりで銀行に出向いたのであれば「キャンペーンのおかげで高い金利がもらえてラッキーだ」と喜んで構いません。
預金はインフレに弱いリスク資産なので、老後資金の一部を株式投信に振り向けるべきだ、と考えているため、投信の購入自体には賛成の立場です。
しかし、おまけに釣られて買ってしまったということであれば問題でしょう。
加えて、1度に100万円の投信を買うのはリスクが大きいので、毎月少しずつ買う方が安心だということも考えましょう。
後から振り返ったら、たまたまその日が株価の高い日だった、という可能性があるからです。このキャンペーンでは、3万円の手数料を受け取って定期預金に1万円の金利を払うわけですから、銀行の収入は2万円です。
ところが、客の出費は3万円の手数料から8,000円の金利収入を引いて2万2,000円です。その差額は税務署の収入になっているわけです。
そんなことなら、キャンペーンの内容を変更して、「100万円以上の投信を買ってくれたら、3万円の手数料を2万1,000円に値引きします」ということにすればよいのです。
そうすれば、銀行の収入が増え、客の出費も減るので、ウインーウインのはずなのです。
それなのに、高金利定期のキャンペーンばかり目につくのは、その方が売れるからなのでしょう。情報弱者の客が多いので、合理的でない商品ばかり各銀行が売っているというわけです。
このキャンペーンが情報弱者を狙ったものであることに気づいていたという人は、この先を読む必要はありませんが、気づいていなかった人は、自分も情報弱者かもしれないと思いながら続きを読んで下さい。
金融というと、抽象的で難しいイメージがあり、普通の人は勉強しようと思わないようです。
学校でも「金儲けのことなど教えるべきではない」ということで、これまで教えてもらえませんでした。
ようやく学習指導要領が変更され、金融教育が始まったようですが、教える側の先生たちが金融教育を受けていないので、今後についても過大な期待は禁物です。
金融については情報弱者でありながら、自分の老後資金等々については色々と決めなければならないことが多くあるわけですから、自然体でいると金融機関等々から様々な勧誘が来ることになります。
当該キャンペーンに限らず、金融機関としては情報弱者の顧客が喜びそうな商品を揃えている可能性が高いと考えた方がよさそうです。
そして、情報弱者が喜びそうな解説をするはずです。 高額の商品を勧められたら、慎重に検討しましょう。
売り手と買い手の情報量がまったく異なるわけですから、なにを質問すればいいのかを考えつくだけでも容易ではないかもしれません。
そんなときは、若干の相談料を払って専門家にアドバイスを求めてみるのもよいでしょう。
無料で相談に乗ってくれる人は自分に都合のいい商品を勧めるかもしれませんから、「タダより高いものはない」ということかもしれません。あえて有料で相談に乗ってくれるプロに相談してみるということも要検討でしょう。
余談ですが、高金利の借入にも要注意です。消費者金融が高金利なのは誰でも知っていますから問題は小さいのでしょうが、クレジットカードのリボ払いやカードローンなどは、金利が高そうに見えないのに「事実上の金利」が非常に高い場合が多いので、しっかり考えてから判断しましょう。
ちなみに、「1万円借りても利息は1日5円だけ」と言われたら、1日5円だと365日で1,825円、10年で18,250円(プラス閏年分)の金利です。
そこまで考えずに借りる人が多いのでしょうが、数字を見たらチョッと電卓をたたいてみる習慣をつけるだけでも助かることは多いかもしれません。
資産運用等々は自己責任でお願いします。