氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

中小企業を襲う「休廃業」「解散」恐怖の足跡

「もう、あきらめた」。中小・零細企業からはそんなタメ息が聞こえてきます。

飲食業などの経営を直撃していた新型コロナは5月8日以降、「5類」に移行します。

客足も戻りつつありますが、賃上げムードの広がる大企業とは違って、給与アップに踏み切れない中小企業は人材流出の危機に直面します。

閉店しましたと、横浜市にある駅前のこぢんまりしたイタリアンに張られた一枚の紙です。ほかに何の文字もなく、閉店したことを告げるだけです。

10人も入れば満席という小さな店でしたが、リーズナブルなうえおいしかったので残念です。1月中旬に行ったときは、ご主人は店を閉めるなんて一言も言っていませんでしたから、突然、決めたのでしょうか。アヒージョがバツグンでした。

このイタリアンは廃業を決めたようです。コロナ禍で客足が落ち、一時はテイクアウトでしのいだものの、赤字が続き店を閉めました。夫婦2人で5年ほど前にオープンしたばかりだったといいます。

 

 

東京商工リサーチがまとめた「休廃業・解散企業」動向調査によると、2022年は2年ぶりに増加し、全国で4万9625件に上りました。

00年の調査開始以降、過去2番目の多さです。

「21年はコロナ関連のさまざまな支援があったので、休廃業・解散は前年を大幅に下回りました。

でも昨年は、原料高や物価高、円安など悪材料が重なり、廃業を選択した中小企業は増えたといえます。

22年の倒産件数は前年より6.6%増の6428件(負債総額1000万円以上)でした。休廃業・解散は、倒産の約7.7倍に達し前年比で11.8%増。倒産よりハイペースで増えています。

コロナ前とは様子が変わっています。22年は、休廃業する企業の黒字率が過去最低を記録したのです。

かつては経営自体は黒字だけれども、後継者がいないなどの理由で廃業を選ぶ社長がたくさんいました。20年は黒字率は70%でした。

22年は原材料価格の高騰などで赤字へ転落し、仕方なく廃業を選択するケースが増えています。黒字率は54.9%まで低下しました。

廃業を決めた冒頭のイタリアンも赤字続きで、このまま赤字額が膨らむと倒産もチラつき、余力のあるうちの廃業を決めたといいます。

「休廃業・解散」と「倒産」の大きな違いは、負債を残しているかどうかです。

休廃業・解散は従業員の給与をキチンと支払い、金融機関などへの借金も返済しています。

 

 

うまくすれば、手元に「次のビジネスのための資金」も残ります。

一方、倒産は負債が残る法的整理です。とはいえ“会社が消える”のはどちらも同じです。従業員は路頭に迷いかねません。

産業別では、どの産業も前年より増加しました。構成比で見ると、飲食業を含むサービス業が最多で32%を占めます。

飲食業は参入しやすい分、撤退もしやすいといえます。しかも、コロナ禍の影響をもろに受けたのは飲食業です。

デリバリー・持ち帰りも競争激化で、苦戦する中小店舗は多いのです。

大手の居酒屋チェーンなどが“ゴーストレストラン”に進出し、ウーバーイーツでもてはやされています。居酒屋店内にブランドだけを変えて営業しているゴーストレストランもあります。

ハンバーガーや丼物など、専門店をうたう場合も多いので人気です。商店街の小規模な飲食店はデリバリー分野でも生き残りが難しくなっています。

22年の飲食業の倒産件数は522件と前年比で2割ほど減りましたが、休廃業・解散は過去最多の1899件に上っています。

もうひとつ、休廃業・解散が過去最高を記録したのが介護事業者です。

「老人福祉・介護事業(介護事業者)」の調査は10年以降ながら、22年は前年比15.6%増の495件を記録しました。

 

 

介護事業者は倒産件数も過去最多(143件)です。コロナ禍の支援効果が薄れるなか、利用者数は回復してきません。

物価高、コストアップが重なり、撤退せざるを得ない事業者が続出したことになります。

東京商工リサーチのリポートには、介護事業者の苦境は、家族を含めて誰もが“介護難民”に直面する可能性を示唆します。

23年は休廃業・解散がさらに増勢を強める可能性があり、社長の平均年齢がより高齢化していることも、休廃業・解散の加速に拍車をかけています。

22年は秋田県の65.33歳を最高に、全国平均は63.02歳と過去最高です(東京商工リサーチ調べ)。

後継者不足は深刻です。高齢の社長ほど業績悪化が進む傾向も調査結果から分かっていますので、経営リスクはより高まっているといえるでしょう。

コロナ前は倒産が増えれば休廃業・解散は減少し、逆に倒産が減れば休廃業・解散は増加する傾向が強かったのですがいまは違います。

倒産が増え、休廃業・解散も増加という最悪事態となっています。

新型コロナ禍の長期化によって、政府の企業への支援効果が薄れてきたことが背景にあります。

特に卸売りはコスト増に加え、コロナ禍の大型イベントなどの中止・延期により、業務用の販売などが振るわなかったことが他の業態に比べて倒産が多い要因でしょう。

コスト増を価格転嫁したくても、中小・零細は取引先とのパワーバランスもあって、すんなり値上げするのは厳しいです。

この先も中小・零細を中心に倒産や廃業が増えていくと考えられます。

日本の会社員の約7割が中小企業で働いています。賃上げムードに目を奪われていると、ヒドい目に遭いかねません。

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