氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

専業主婦世帯への批判の元となる「第3号被保険者制度」

未婚化率と高齢化率の上昇により増加している、一人暮らしの高齢者です。あえて結婚しないという選択をする人も増え、今後、ますます増えていくと考えられます。

一生、悠々自適と羨ましい反面、残酷なリスクに直面する人もいます。

時代は変わったのに、なぜ廃止にならないあまりに不公平、ネット上に広がる、専業主婦に向けられた辛辣な言葉です。

批判の元となっているのは、「第3号被保険者制度」という年金制度です。

そもそも現在の日本の公的年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」の2階建てです。

さらに3階部分として、企業が任意で設立し社員が加入する企業年金や、国民年金の第1号被保険者が任意で加入できる国民年金基金などがあります。

 

 

20歳以降の働き方によって、加入する年金や保険料が変わり、自営業者や学生、無職であれば「第1号被保険者」となり、加入するのは国民年金のみです。

会社員や公務員は「第2号被保険者」で、国民年金と厚生年金に加入。専業主婦(夫)などは「第3号被保険者」で加入するのは国民年金のみとなります。

そして批判の対象となっているのが、保険料。第3号被保険者は、自ら保険料を納める必要はなく、その費用は第3号被保険者の配偶者が加入する厚生年金から拠出されるとされています。

自ら納付していなくても納付扱いとなり、将来、基礎年金が受給できるわけですから、共働き世帯や独身男女、自営業の妻などから、「第3号被保険者だけがズルい」という声があがるのも仕方がないことかもしれません。

ただし昔は批判の声も小さいものでした。

「第3号被保険者制度」ができた1986年、共働き世帯720万世帯に対して、専業主婦世帯は952万世帯と、「優遇してくれてありがとう!」という声が圧倒的に大きいものでした。

世帯数が逆転したのは90年代後半で、徐々に共働き世帯は増え、徐々に専業主婦世帯は減っていきましたが、その差はいまほど大きなものではなかったのです。

それが2010年代に入ると、大きく共働き世帯は増え、専業主婦世帯は減りました。2021年には共働き世帯は1,247万世帯、専業主婦は566万世帯と、共働き世帯が専業主婦世帯の倍以上となったのです(総務省労働力調査特別調査』『労働力調査』より)。

そうなると批判の声は、なぜか専業主婦、そのものに向かっているものもあり、議論は白熱するばかりです。

 

 

さらに批判の的となるのが、扶養でいるための就労調整です。扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。

「税法上の扶養」に入るには、所得税法で定められた

「(1)6親等内の血族及び3親等内の姻族」

「(2)納税者と生計を一にしていること」

「(3)年間の合計所得金額が48万円以下(収入103万円以下)」といった3つの要件に合致していることが条件となります。

そして配偶者が優遇を受けられる「配偶者控除」は、控除対象配偶者がいる場合に適用されます。

その要件は、

「(1)納税者本人と生計を一にする配偶者」

「(2)配偶者の年収が103万円以下」

「(3)納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下」の3つです。

妻のパート収入が103万円以下であれば、夫は最大で年間38万円の配偶者控除を受けられます。

そして妻のパート収入が103万円を超えても、「配偶者特別控除」が受けられる場合があり、その要件は

「(1)納税者本人と生計を一にする配偶者」

「(2)配偶者の年収が103万円を超え201万円以下」

「(3)納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下」の3つです。

また妻のパート収入が103万円を超えると、配偶者特別控除の適用範囲となりますが、103万~150万円までは配偶者特別控除が適用され、配偶者控除と同額の控除を受けられます。

150万~201万円までは、配偶者特別控除の額が徐々に減少していきます。

続いて「社会保険上の扶養」ですが、健康保険法で定められた被扶養者の要件に合致することが必要で、収入が130万円を超えると、「社会保険上の扶養」から外れます。

また、2020年の年金制度改正法により、

「(1)企業規模が500人超(ただし令和6年まで段階的に引き下げ)」

「(2)賃金が月額88,000円以上」

「(3)労働時間が週20時間以上」

「(4)勤務期間が2ヵ月超」

「(5)学生は除外」の条件を満たす場合、社会保険料の負担が発生します。

 

 

これらの収入の上限が設けられていることから、「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」「201万円の壁」と称され、多くの専業主婦はこの「壁」を意識しながらパートなどをして家計を支えることになります。

共働き世帯と専業主婦世帯の家計の違いをみてみると、総務省『家計調査』(2021年)によると、両者の平均的な家計収支は以下のとおりです。

夫(世帯主)の収入は専業主婦世帯のほうが多いですが、働き手が2倍の共働き世帯は世帯年収では月10万円強上回り、黒字額も大きくなっています。

ちなみに負債額の差は、共働き世帯のほうが持ち家率が10ポイント近く高いことに起因しているものと考えられます。

【共働き世帯と専業主婦世帯の家計収支】

◆月間

・実収入:712,067円/588,065円

・勤め先収入:679,759円/548,346円

・世帯主(男)収入:490,753円/548,346円

・実支出:466,942円/418,836円

・消費支出:333,241円/302,206円

可処分所得:578,366円/471,435円

・黒字額:245,125円/169,230円 ・黒字率:42.4%/35.9%

◆年間

・年間収入:821万円/684万円

・貯蓄:1,372万円/1,578万円

・負債:1,019万円/825万円

物価高騰で家計がひっ迫するなか、世帯年収をあげるというのがひとつの防衛策です。

しかし就労抑制になりかねない「専業主婦優遇」は、その足枷になっている部分もあります。

また女性の社会進出を阻むものとして、政府の間でも議論されています(第14回男女共同参画会議影響調査専門調査会等)。

大きく歴史が動いている感のある昨今です。「専業主婦優遇」も見直しへと舵がきられるかもしれません。

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