なぜ、かつては二大経済大国と称された日米に、これほどまでの差がついてしまったのは、「資本主義国家のアメリカに対して、日本が社会主義国家だから」ということになるでしょう。
社会主義国家が資本主義国家に敗北したのは、20世紀の歴史が示す厳然たる事実です。
ソ連が崩壊し、中国は建前はともかく、とっくの昔に資本主義国家になっています。
しかし、日本はいまだに社会主義国家であり続けており、敗北するのは当然だということです。
もちろん、日本は建前としては資本主義国家ですが、その現実は社会主義国家以上に社会主義です。
日本は大きな政府で、政府による規制が強く、「結果の平等」を重視し、まさに社会主義そのものです。日本では稼げば稼ぐほど高額な税金を取られます。
一方、低所得者への生活保護は充実し、頑張って稼いだ人がなかなかお金持ちになれない一方、頑張らなくてもある程度の生活はできてしまう、ということです。
もちろん、様々な理由で働きたくても働けない人も多く、そういった人たちの生活は保護されなくてはなりません。
しかし、働いても働かなくてもそれほど生活に大きな差が出ない、ということになると、誰が真剣に働こうとするでしょうか。
これはまさに、社会主義国家が踏んできた轍に他なりません。
アメリカにももちろん累進課税はありますが、日本よりも高所得者の税率は低く抑えられ、相続税もないに等しいのです。
だからこそ一獲千金を目指して世界中から人が集まり、必死に働き、それが経済の活力を生んでいるのです。
2022年10月2日の日本経済新聞によると、資産10億ドル(約1400億円)以上の富豪(ビリオネア)が一番多いのはアメリカで719人、2位が中国で440人、3位がインドで161人でした。
それに対して日本は27人で、台湾の45人、韓国の28人を下回るのだそうです。格差などないはずの共産主義国家である中国が世界第2位というのもおかしな話ですが、それより圧倒的に富豪が少ないのが日本なのです。
しかも、他国は相続税廃止・軽減の方向に進んでいるのに対し、日本はむしろ重税化の方向に向かっています。優秀な人材ほど、ますます日本を去っていくことでしょう
日本のリーダーあるいは資産家と呼ばれる人は、相続税をどう節税しようかという話ばかりしていて愕然とします。貴重な時間やエネルギーをそんなことに費やしてしまうから、この国は発展しないのです。
それに対してアメリカでは、優秀な人は莫大(ばくだい)な資産を手にすることができるからこそ、世界中から天才たちが集まります。
GAFAMをはじめとしたアメリカの優良企業のトップ層には天才の移民が数多くいます。
グーグルCEOのサンダー・ピチャイ、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラはインド出身、テスラのイーロン・マスクは南アフリカ出身の移民です。
そうした天才たちが成功すれば儲かり、税金もそこそこで済むアメリカに集まり、切磋琢磨(せっさたくま)することでさらに業績を上げていくのです。
アメリカという国はそうしたトップ5%が動かしている国で、彼らが作ったシステムで残り95%の人が働くことで、社会が回っていくのです。
そしてこの上位5%の人たちはもともと優秀なだけでなく、めちゃくちゃ働きます。
だから、さらに稼ぐようになり、格差もどんどん広がっていくのです。
スポーツの世界を見ればそれがわかると思います。野球のメジャーリーグの一流選手がもらう金額は、日本のトッププレイヤーの10倍以上です。
日本の野球はレベルが高いなどと言われますが、年棒では世界の二流リーグと言わざるを得ません。
大谷、ダルビッシュなど超スーパースターで高給取りが抜けていくのですから、みな平等になるわけです。ある意味、今の日本社会を象徴しているのかもしれません。
確かにアメリカでも格差の拡大は問題視されていますが、金持ちが超金持ちになったから格差が広がったのです。
日本の格差は金持ちがより金持ちになったから格差が開いたのではなく、中間層が没落していったから格差が拡大したのです。
アメリカの格差拡大の理由とはまったく違うというのは、格差を研究している研究者のほぼ一致した結論です。
また、アメリカは国として優秀な人材を集めようとしています。移民に対する厳しい姿勢で知られたトランプ政権下でも、コロナでビザ発行を中止した時でも、研究者などの優秀な人材にだけはビザが発行されていました。
一方、日本でも移民政策が議論されていますが、その論点はあくまでも「労働力不足の解消」です。
もちろん人手不足のアメリカにもそういう側面はあるにはありますが、より重要なのは高い報酬に惹かれて世界各国から集まってくる優秀な人材のほうです。
そもそも日本ではいくら仕事の環境を整えたところで、成功しても大して豊かになれないのだったら誰も来ないでしょう。
アメリカに行けば環境も整っている上に、大金持ちになれるのです。いわば、アメリカは「努力をした人を引き上げる国」「天才を引き上げる国」。
一方の日本は「努力をした人を引きずり下ろす国」「天才を引きずり下ろす国」。その差は極めて大きいと言わざるを得ません。
そもそも、日本にはアメリカのような真の富裕層などはほとんど存在しません。
さらに、中間層すらいなくなりつつあります。そんな状況下で格差を是正しようとすると、どうなるか。国全体が平等に貧乏になっていくのです。
日本では経済の活性化を唱える政治家よりも、国民の格差是正を訴えるリーダーばかりが支持を集める傾向があります。それは国全体で貧しくなることだ、という一面があることも、理解していてほしいと思います。
中国の習近平国家主席は「共同富裕」というスローガンを打ち出していますが、日本の場合は「共同貧困」へ向かっていると思わざるを得ません。
イギリス経済を復活させた「鉄の女」マーガレット・サッチャー元首相は、「人のポケットに勝手に手を突っ込むな」という名言を残していますが、まさに、そのとおりなのです。
政治家が税金を集めて、自分の票を集めるためにバラマキを行うことに対する警告です。
昨今、資本主義の終わりということが盛んに言われていますが、こと日本に関して言えば、「資本主義が終わろうとしている」のではなく、「資本主義でなかったから終わろうとしている」のです。