氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

国民年金を厚生年金で穴埋め

100年安心を掲げた「平成の年金改革」では保険料が13年間にわたって毎年引き上げられたうえ、年金支給額を自動減額する「マクロ経済スライド」が導入されました。

安心どころか、老後不安は一層高まりましたが、岸田政権はそれに輪をかけた「令和の年金大改悪」に走り出しました。

手始めに、逼迫する年金財政の穴埋めに「サラリーマンの年金」が狙われています。

物価高騰が国民生活を直撃するなか、そのウラで、国民をさらに苦しめる計画が政府内で進められています。「岸田年金改悪」です。

 

 

自営業者やフリーランス、農林業業者などが加入する国民年金は保険料の未納率が高く財政は危機的状況です。

現在の国民年金の支給額は保険料を40年間納めた満額のケースで月約6万5000円ですが、厚労省の年金財政検証によると、現行制度のままでは2046年度には支給額が3割弱下がると試算されています。

そこで厚労省は、国民年金の支給額を将来的に「5万円台」に維持するために、サラリーマンが加入する厚生年金の報酬比例部分(2階部分)の支給額を減らし、浮いた財源を国民年金に回して穴埋めする仕組みを検討しています。

政府の社会保障審議会年金部会でこの秋から制度改正の議論が始まると報じています。

国民年金の自営業者と厚生年金のサラリーマンのほとんどの層で年金額が増え、損をするのはごく一部の高額所得者だけと説明されれば、多くの国民は改革を歓迎するはずです。

しかし、そもそも自営業者の国民年金の財政が立ち行かなくなったから、サラリーマンの厚生年金で穴埋めするというのです。

自営業者の国民年金とサラリーマンの厚生年金は別物です。会社員は本人と会社が折半するかたちで高い保険料を納めており、それを国民年金を維持するための穴埋めにするというのは公平性が担保されなくなります。

場当たり的な対応をしているようにしか思えません。世帯年収1790万円以上の層だけが損するといった試算も高額所得者なら文句を言わないだろうと見込んだやり方のように思います。果たして本当にそんなことができるのか疑問です。

 

 

トータルの年金財源は変わらないのに、年金支給額を増やすというマジックが“トリック”なしでできるはずがありません。

厚労省は年金の財政を5年ごとに検証し、制度改正を行なってきた。実は、危機的な国民年金の財政を厚生年金で補填するアイデアは前回の2019年財政検証でシミュレーションされており、それをいよいよ実行しようとしています。

だが、「厚生年金の財源を国民年金に回します」とストレートに説明すれば、サラリーマンの反発を浴びます。

年金制度は“100年安心”を謳った2004年の小泉年金改革で抜本的な制度の変更が行なわれました。本来、年金には、インフレ時に年金生活者が困らないように年金額を物価上昇率と同じだけ引き上げる仕組みがあります。

しかし、2004年改革では、インフレ時も年金の引き上げ幅を物価上昇より低く抑える「マクロ経済スライド」(以下、スライド)が導入されました。

これが長い期間をかけて年金額を徐々に目減りさせていくカラクリです。現行ルールでは、厚生年金の報酬比例部分のスライド(減額)は2025年に終了し、それ以降は年金を減らされなくなります。

一方の国民年金(基礎年金)のスライドは2046年まで続き、年金額は減り続ける見通しです。

厚労省はそのルールを変更し、厚生年金と国民年金のスライド期間をどちらも2033年までにすることを検討しています。

改革が行なわれれば、厚生年金の報酬比例部分は減額期間が長くなることで支給額が大きく目減りするのに対して、国民年金(基礎年金)は減額期間が短くなるから目減りは少なくて済むという理屈です。

このスライド期間の変更によって、サラリーマンの厚生年金の財源を巧妙に国民年金に移すことができるわけです。

厚生年金の受給者にすれば、3年後に終了するはずの年金減額が2033年まで8年間延長されるので、得するはずがありません。

 

 

厚労省が言うような高額所得者だけでなく、すでに年金を受け取っている標準的な元会社員も損するのです。

厚労省はこの改革で国民は「得する」と説明しているカラクリは、現行ルールのもとで年金が下がり切る(1階部分のスライドが終了する)2046年時点の支給額をもとに、「世帯」合計の金額で損得を比較していることにあります。

厚労省の標準モデル世帯は、夫はサラリーマンで厚生年金、妻は専業主婦で国民年金のケースを想定しています。

そうした世帯であれば、今回の改革で夫の厚生年金は現行ルールより減って損しますが、妻の国民年金は現行ルールの金額より増えるため、夫婦で合わせると「得が損を上回る」と計算しているのです。

夫婦とも厚生年金の共稼ぎ世帯や単身サラリーマン世帯で損失が上回る可能性は説明されていません。

さらに、厚労省の改革プランには重大な欠陥があり、国民年金の財源は加入者と国が折半しています。

厚生年金の財源の一部を国民年金に回すとしても、それは加入者負担分の穴埋めに使われるので、国民年金の支給額5万円台を将来も維持するためには、当然、国庫負担が大きく増えます。

しかし、財務省は年金の国庫負担増を認めず、厚労省はそれを承知で、国民年金が増えるという楽観的な説明をしているわけです。

なぜそれが通用するかといえば、この改革案を時系列で整理すると、2025年以降の8年間で先に厚生年金を減額し、国民年金を増やすための国庫負担増が生じるのは33年以降になります。

いざその時になると、財務省がどうしてもウンと言わないと国民年金の増額が反故にされる事態は過去の例から見ても十分考えられます。

これまで政府の年金改革は、目先の年金財政をまかなうために「給料天引き」で保険料の取りっぱぐれがないサラリーマンの厚生年金をかき集めようとしてきました。

今年4月からは、働きながら年金を受給する65歳未満の「在職老齢年金」の支給カット基準が緩和されて早期リタイアを防ごうとしています。

この10月からは「週20時間以上」勤務するパートは厚生年金加入が義務化、「年収130万円」を超えるパートも配偶者の扶養家族から外れ、厚生年金等に加入して自分で年金保険料を支払わなければならなくなりました。 

いずれもサラリーマンを長く働かせ、パートなど短時間労働者もどんどん厚生年金に加入させることで、保険料収入を稼ごうという目的です。

年金財政からいえば、加入者が増えるほど将来の年金支払いも増えます。

それでも「将来の負担など考えずに目先の保険料収入」で年金を支払っていく“自転車操業”そのものです。

いまや100年安心と言った2004年の年金改革が完全に失敗だったことです。

マクロ経済スライドは経済が成長していくなかで、受給者が気付かないように年金の価値を少しずつ減らしていく仕組みですが、長い期間、日本経済は成長せず、賃金も伸びなかったから機能しなかったのです。

現在の年金制度はとっくに限界を迎えているのに、国民年金を厚生年金で穴埋めするというのは、今なお経済成長で賃金が上がり続けることを前提にした発想です。

こんなことを続けてもいずれ行き詰まるでしょう。

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