氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

日本人の賃金低下は非正規雇用の増加が生み出したもの

日本の年平均賃金は、2000年の464万円から20年の440万円まで、5.2%下落しました。

賃金の長期的下落は、他の国では見られない現象です。

自国通貨建ての計数を見ても、2000年から20年の間に、多くの国で、賃金が著しく上昇しています。

フランス48.7%、ドイツ52.0%、イタリア31.7%、韓国118.4%、イギリス65.3%、アメリカ78.1%です。

主要国の中で日本だけが低下しているのは、日本経済が深刻な病を抱えていることの結果です。

 

 

なお、自国通貨建ての数字なので、日本の場合に為替レートが円安になっていることの直接的な影響はない(市場為替レートで比較すると、円安の影響が加わるので、日本の賃金の低下傾向はさらに大きくなり、世界的に見ても貧しくなっている)。

外国人観光客が爆買いしているニュースが流れていますが、日本人は国内観光地での消費額も少なく、海外旅行もまともに行けなくなっているほど貧乏になりました。

多くの人は、「賃金が上がらない」とは思っているでしょうが、下がったとは実感していないでしょう。

日本の賃金体系は年功序列的で、歳をとるほど上昇することなので社会全体の賃金が下がっても、個人の賃金は上昇することが多いのです。

このため、経済全体の賃金低下が大きな問題として意識されないのかもしれません。

しかし、日本の平均賃金の下落は厳然たる事実なので、その原因を解明する必要があります。

そこで、一般労働者とパートタイム労働者に分けて推移を見ると、パートタイマーの賃金は、継続的に上がっています。

一般労働者も、傾向的に下がっているわけではありません。

2007年頃までは停滞しましたが、13年頃からは上昇しています。

このように一般労働者もパートタイマーも賃金が格別に下がっていないのに、全体で見ると、なぜか平均賃金が下落しています。

ここには、日本の賃金事情の大きな問題が隠されています。この問題を解く鍵は、パートタイマーの増加にあります。

平均賃金では日本より韓国のほうが高いのに、一人あたりGDPでは日本はまだ韓国に抜かれていないのは、一人あたりGDPの場合には分母が総人口であることの影響が大きいのです。

パートタイム労働者の比率は、日本では顕著に上昇しています。

それに対して、他国では、さほど増えていません。

OECDのデータによれば、2020年におけるパートタイム労働者とフルタイム労働者の比率は、日本が25.8%、韓国が15.4%、OECD平均が16.6%です。

OECDの賃金統計は、フルタイム当量によるものです。

フルタイム当量は、フルタイムで働く従業員の仕事量を基準にして、業務やプロジェクトに必要な仕事量を計算する際に使用される単位です。

それに対して日本の賃金統計は、フルタイム当量で計算していないので、平均賃金の下落が大きく見えます。

OECDの統計は、フルタイム当量によるものであるにもかかわらず、日本の平均賃金が下落しています。

 

 

これは、パート就業者は、単に「就業時間が短い」だけでなく、「時間給も低い」ことを意味します。

つまり、労働時間が短いだけでなく、時間給も低い就業者が増えているのです。

なぜそうした就業者が増えるのかには、税制が大きな影響を与えています。

これは、18年に行われた税制改正の影響で、従来は、配偶者の給与収入が103万円を超えれば、配偶者控除を受けることができませんでした。

そこで、パートなどで働く人は、労働時間を抑えて働いていました。

これが「103万円の壁」といわれてきたものです。

このように、税制は、働き方に大きな影響を与える。日本の場合に女性の就業がパートタイムを中心にしたものになってしまうのは、このような税制の存在が大きな原因です。

ところが、18年の改正で、配偶者の給与収入が103万円を超えても、150万円までなら配偶者控除と同額の配偶者特別控除を受けられることになったのです。

そして、201万5999円までであれば控除を段階的に受けられるようになりました。この改正に対応して、多くのパートタイマーが労働時間を増やしたのです。

このため、平均賃金が上昇しました。ただし、いまでも配偶者控除制度による制約は残っているので、本当はもっと働きたい人が、労働時間を抑えている可能性が否定できません。

労働力が減少する社会において、このような制度の存在は、大きな問題です。

配偶者控除という制度は、「女性は専業主婦」という時代の名残です。こうした制度を変えることによって、女性の社会参加を増やすことが可能でしょう。

ただ、女性の社会参加を促進すると、婚期が遅れたり、未婚化の加速で、少子化に拍車がかかるおそれもあります。

また、一国の人口のうちどれだけの人が労働力になっているかを示すために、通常使われるのは、「労働力率」という指標で、15歳以上人口に対する労働力人口(働く意思のある人)の比率です。

労働力調査によれば、日本の労働力率の推移は、男性は低下気味に対して、女性は2013年頃からかなり顕著に上昇しています。

男女計では、12年頃までは緩やかに低下していましたが、15年頃から上昇しています。

20年では、男女計で62.0%、男が71.4%、女が53.2%です。男性の数字が低下してきたのは、高齢者の比率が上昇しているためです。

これが人手不足を引き起こしており、経済成長の足を引っ張っています。

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