これから時代の中心となっていくミレニアル世代(1983年~1994年生まれ、おおよそ現在の26~37歳)とZ世代(1995年~2003年生まれ、おおよそ現在の17~25歳)は、インターネット環境が整ったころに育った最初の世代で、これまでの世代とは大きく価値観が異なると言われています。
その働き方や仕事観の特徴としては、よく下記のようなものが挙げられます。
・プライベートも重視する
・転職活動に対して抵抗がない
・働き方に柔軟性を求める
・起業やフリーランスなどの独立意識が高い
特に日本においては、長時間労働や年功序列、男尊女卑が根強く残る職場がいまだに多いことから、ワークライフバランスやフラットさを重視している若者が多いのです。
若者たちにとってのワークライフバランスとは「がむしゃらに働いたり人並み以上に努力したりしないこと。あるいはその努力を軽視すること」です。
少し前に「最近の若者は課長にすらなりたくない」という統計データが広まりましたが、それはすでに時代遅れです。
日本生産性本部の「新入社員『働くことの意識』調査」で、「どのポストまで昇進したいか」という質問に対し、10年前と比べ最も増加した答えが「どうでもよい」となる世の中です。
出世したくないのではなく、もはやどうでもいいのです。
こういった傾向から、仕事に対する意識の低さを「今の若者はワークライフバランスを重視するようになったから」と理由付けする論調が非常に多いです。
例えば、 最近の若者の中には、特にやりたいことはない、という人が増えました。
一方、プライベートの時間を充実させたい、私生活を豊かにするために働きたい、と考えるのがイマドキの若者です。
したがって、就職先を選ぶときも、ワークライフバランスを最重視します。
端的に言えば、給料はそこそこで早く帰れる会社、となります。
あるいは、現在の若者は、非常に多様な趣味を持っています。
昔のように、皆が車を持つ、といった時代ではなく、それぞれが好きなことを大事にする時代です。
よって、働き方を考えるときも趣味の時間の確保が最優先となります。
それが今の若者の仕事観です。就職先の選択において、ある程度の給与がもらえる安定した会社、という条件が一番に挙がってくるのも、趣味の時間を意識した結果でしょう。
彼らは、節約するところは徹底的に節約する一方、好きなことにはお金を惜しみません。
しかし、世に出回っているこれらの論調には2つの重大な誤解が含まれています。
第1の誤解は、若者のプライベートな時間の重要度が上がったがゆえに、仕事に対する意識が低下した、と考えることです。
これの何が誤解かというと、「今の若者は積極的にワークライフバランスを取りにいっている」と考える点にあります。
人並み以上に努力する=意識高い系の人たち、ワークライフバランスを重視する=そのほかの人たち、というイメージでしょうか。
いい子症候群の視座からは、積極的にワークライフバランスを取る時点で意識高い系なのです。
プライベートの時間を重視したい、私生活を豊かにしたい、といった「**したい」という表現自体、意識が高い証拠であり、全然、いい子症候群らしくありません。
「積極的ワークライフバランス派」は大人が作った虚像にすぎません。
「自分の時間を大切にしたい」などはとても前向きです。
いい子症候群の若者は、むしろ「〇〇したくない」という思考が中心となります。
リスク回避志向とはそういうことです。
第2の誤解は、そのプライベートの時間の解釈にあります。
「若者は多様な趣味を持っている」という”専門家”の意見があるようですが、実際にはその可能性は低いです。
自分の好きなことに惜しみなくお金をつぎ込む姿勢も、ごく少数の意識高い系のすることです。
仕事もそこそこに後はやりたいことに熱中する人は、はたから見ても生き生きしているはずです。
多くの若者がプライベートの時間に何をしているかといえば、ゲーム、ユーチューブ、Amazonプライム・ビデオ、Netflix、そしてSNSです。
これらはコロナ禍のステイホームによってより加速しました。
いい子症候群の若者たちには、特にやりたいことはないのです。
そもそも、人に譲れないほどの趣味を持つ人なら、仕事もそれなりにがんばれるでしょう。
ある意味で自分の中に1つの軸ができているから、陰キャぽくもメンヘラぽくもなったりしません。
ワークライフバランスの問題点として、現在の評価制度と合わないケースが挙げられます。
内閣府の調査によると、残業や休日出勤をせずに時間内に仕事を終えている人に対して、人事評価でマイナスに評価しているケースが一定の割合で存在するという結果が出ています。
残業して仕事やってる感のフリをしてダラダラ仕事した人の方が評価が上がるのはおかしな話です。
時間内に仕事を終える人をマイナスに評価する組織風土の企業では、テレワークやフレックスタイム制などを導入したとしても、公平な評価ができません。
ワークライフバランスを推進するためには、労働時間ではなく業務の質や結果で評価する職務評価制度の導入が必要です。
職務評価制度の導入は、ワークライフバランスの推進だけでなく、同一労働同一賃金制度の観点からも効果的です。
優秀な人材のモチベーション向上や配属の適材適所の実現にもつながるため、企業にとっては制度導入の手間以上のメリットが得られるでしょう。