氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

テレワークで行き場失う承認欲求 偉さ誇る時代の終わり

新型コロナウイルス禍を受けて、半ば強制的にテレワークが導入されてからおよそ2年が経過しました。

日本生産性本部が今月上旬に行った調査によると、「テレワークを実施している」と答えた人の割合が3カ月前より3.8ポイント低い16.2%と2020年5月の調査開始以来、過去最低となりました。

年代別では20代と30代で大きく低下した一方、40代以上は、ほぼ横ばいで若い世代でテレワークが減っている現状が浮き彫りとなりました。

会社が対面での働き方に戻し、出社を求められるようになった会社員も多いでしょう。

各種の調査から分かってきたのは、テレワークでどうしてもできない仕事はさほど多くないという事実です。

営業や窓口業務のほか、製造や建設現場の仕事ですらリモートでこなせるようになっています。

 

 

むしろテレワークの定着を妨げる「見えない壁」が社会的・心理的な要因の中にあることが分かってきました。

社員の承認欲求、とりわけ職場という共同体の中で自分の存在感を示そうとする日本人特有の表れ方がテレワークの普及を妨げていることを明らかにしています。

さらにテレワークだけでなく、組織のスリム化やムダの削減といった改革にも少なからぬ影響を与えています。  

その一端は次の調査結果からもうかがえます。パーソル総合研究所(東京・港)が2020年3月にテレワークを行っている人を対象に行った調査では、回答者の4分の1以上が「私は孤立しているように思う」「私には仲間がいない」と答えたそうです。

テレワークの頻度が高いほど孤立感も強くなる傾向がみられました。  

なかでも管理職がテレワークの影響を強く受けていることは、「必要がないのに出社を命じられる」「リモート飲み会の開催を執拗に迫られる」といった部下が口にする不満の声からもうかがえます。  

管理職の承認欲求はこれまであまり注目されてきませんでしたが、他の欲求に勝るとも劣らない力で人の態度や行動に影響を及ぼすことが明らかになってきました。

 

 

わが国特有の組織・社会構造によって欲求が前述した独特の表れ方をすることもわかってきました。

「序列」意識させる大部屋オフィス は、本人がどれだけ意識しているかはともかく、日本企業の管理職にとって会社は自分の「偉さ」を見せびらかす場であり、それによって承認欲求を満たしています。

地位の序列は「偉さ」の序列であり、大部屋で仕切りのないオフィスは序列を見せびらかすのに適した構造になっています。

部下は上司の一挙手一投足に注目し、ひと言ひと言に耳を傾けてくれます。

自分が仕切る会議やイベントは管理職にとってはハレの舞台です。  

程度の差はあれ、非管理職や若手社員も意識は同じです。

社内での地位は低くても下請け企業や取引先に会社のブランドをひけらかすことがあります。

若手社員も新人が入ってきた途端にがぜん張り切り、先輩風を吹かします。先輩が新入社員を公私両面で指導するメンター制度も、指導される側はともかく指導する側のモチベーションは明らかにアップします。

自分の「偉さ」を見せびらかすことによって承認欲求を満たす日本人サラリーマンの志向と行動特性は、日本の組織・社会特有の構造から生じています。  

一つは、この国がいわゆる「タテ社会」だということです。社内の上司と部下の関係だけでなく、元請けと下請け、顧客と店舗、さらには取引先との間でも上下関係ができ、そこから「偉さ」の序列が生まれます。

敬語や言葉遣いにそれが象徴的に表れ、「対等」という概念がないのです。接待や宴会は「偉さ」を見せびらかす場です。  

 

 

もう一つは会社がイエやムラのような共同体としての性格を備えていることです。

日本企業はいまだに終身雇用の枠組みを残しており、転職や中途採用などメンバーの入れ替わりが少ないのです。

メンバーが固定化すると、自然に「偉さ」の序列ができます。  

このようなタテ社会と共同体型組織は、かつての工業社会、とりわけ少品種大量生産型システムとは相性がよかったのです。

決まったものを正確に作るには、軍隊のような上意下達の規律正しい組織が効率的でした。単純な事務作業が中心のオフィスも同じです。

ところが、ネットの世界は基本的にフラットです。テレワークはタテよりヨコの関係で進められます。

これまで管理職が担ってきた情報の集約、伝達、仕事の配分といった仕事の多くは不要になり、組織の階層は少なくて済みます。当然、管理職の数も減ります。

その結果、「偉さ」の源であるシンボルが消滅していきます。  

テレワークだと物理的にも、社会的・心理的にも共同体の境界があいまいになります。

上司からすると自分の存在を認めてくれる部下は目の前にいないし、部下は社外の人たちとネットワークを築いていきます。

情報・ソフト系の企業などでは、もはや会社の内と外との境界さえわかりにくくなっています。

そのような中で自分の「偉さ」を示そうとすると部下たちは離れていくか、下手をするとパワハラ扱いされるのがオチです。

そもそも「欲求」である以上、食欲や性欲などと同様に捨て去ることは難しいのです。

問題は人格的な上下関係に基づく「偉さ」を誇るところにあり、人格的に対等な関係の中で個々人が能力や業績、個性などを認められる場をつくればいいわけです。  

スポーツや芸能などの世界を見れば分かるように、「自分をアピールしたい」という欲求は活躍と成長の原動力にもなります。

コロナ下のテレワークで従来の価値観や行動様式が通用しなくなった今、承認欲求を満たせる場をどう構築するかが重要です。

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