氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「消費税は法人税減税の穴埋めに使われている」かを検証

選挙になると「消費税増税法人税減税の穴埋めだ」という有権者に対し、強く主張している政党があります。

下のグラフを見ますと、確かに、この30年で、消費税収は増え、法人税は減っていますから、一見するとその主張が正しいようにも見えてきます。

図1 消費税収と法人税収の推移
【消費税収と法人税収の推移】

しかし、法人税が減った原因は、国内企業の活力と国際競争力を維持する観点から「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という方針の下で法人税改革が進められたことと、国内景気低迷の結果と言えます。

なお、最近では、日本経済が絶好調のバブルの頃と比較すればさすがに見劣りはしますが、リーマンショック前の水準まで戻しています。

一方、消費税が増えた原因は、1999年度以降、年金、高齢者医療、介護といった「高齢者三経費」に充てることとされました。(福祉目的化

さらに、2014年度からは、子育てなど「社会保障四経費」に消費税増収分の全てを充てることが消費税法等に明記されたことにあります。(社会保障目的税

つまり、増え続ける一方の社会保障給付費(全体の3分の2は高齢者向けの給付であることには留意)を賄うために消費税が必要なのです。

次のグラフは、社会保障給付費とその財源構成の推移を示しています。

青い箇所が社会保険料収入で賄われている部分です。

図2 社会保障給付費とその財源構成の推移
社会保障給付費とその財源構成の推移】

黄色い箇所は消費税収で賄われている部分です。

同図からも明らかなように、社会保障給付費を社会保険料収入と社会保障目的税とされている消費税収では賄いきれずに、借金をしている状況です。

その借金部分が赤い箇所になります。

しばしば、「消費税が引き上げられたのに年金は減らされ、窓口負担も増えている、消費税が社会保障目的税なんて言うのは嘘だ」とか「消費増税社会保障の充実とは関係ない借金返済に流用されている」などとの主張もなされます。

しかし、そもそも、社会保障財政は赤字で、「借金(赤字国債を発行)」することで子や孫の負担で今の給付を賄っているのです。

つまり、「消費税増税法人税減税の穴埋めだ」という主張は、法人税減収は国際競争力の確保、消費税増収は社会保障維持のためという異なる文脈から生じた結果をあたかも因果関係があるかの如く仕立て上げた「陰謀論」と言えば言い過ぎになるかもしれませんが、誤解であることは確かです。

社会保障財政は赤字」であり、「消費税は社会保障目的税化されている」という2つの事実を重ね合わせて考えれば、消費税減税・廃止を主張する以上は、代替財源をどうするのか、そしてその際の中長期的な影響についてもしっかり根拠を示して国民に提示する必要があるはずです。

実は、法人税が抱える問題については、法人税減税された分が消費税で穴埋めされているか否かなどではなく、「6~7割前後の企業が法人税を納めていない」という現状にあります。  

 

 

法人税の課税対象は、企業の所得であるため、所得のない赤字法人(欠損法人)は、原則として法人税の納税義務はないうえに、別の年度においても欠損金の繰越控除や繰戻還付金等の特例措置が認められています。  

日本の法人企業に占める欠損法人の割合(赤字企業割合)は、バブルの好景気に沸いた1990年でも48.4%に上っていました。

さらに、90年代に入ってから赤字企業割合は急速に上昇し、現在、全法人(279万社)の62.3%(174万社)に達しています。  

日本に存在する6割以上の企業が法人税を納めていない状況を放置したままでは、経済対策によって企業の業績が上向いても、そもそも課税ベース(利益)が増えないのですから、法人税収が増えるわけもないのです。  

さらに、企業規模別にみると、法人数で全体の0.6%に過ぎない資本金1億円以上の法人(1.7万社)が日本の法人税総額11.7兆円のうちの5.8兆円、52%を負担しています。

中でも809社しかない資本金100億円以上の法人が法人税の25%を負担する構図となっており、法人税負担が一部の企業に集中しています。  

つまり、政府が目指す「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」成長志向型の法人税改革が未完であることがわかります。

こうした一部の大企業に法人税が集中する現状を放置したまま、選挙向けのバラマキの財源として法人税増税を行えばどういうことが起きるかを考えないといけません。  

 

 

法人税増税により負担が集中することになる企業は、世界の国・地域の中から立地を選択すればいいので、重い負担に嫌気がさし日本を脱出するでしょう。

先進国には日本よりも法人税率が低い国がまだまだ多いのです。

日本に残る選択をした企業は、国際競争力が低下し、従前の利益も雇用も維持できなくなります。  

また、それまでは正直に法人税を負担していた企業も、租税特別措置を駆使するなどして、税負担逃れを始めるでしょう。

そもそも社会保障の企業負担は1990年21兆円から2019年35兆円と14兆円も増加している。増加した金額だけでも22年度の法人税収を上回る大きさです。  

このように、法人税率の引き上げは、ただでさえ過重な社会保障の企業負担と相まって、企業の国際競争力を削ぎ、産業の空洞化を促進するため、日本経済の低迷にしか繋がりません。  

日本経済の没落を望むのであれば話は別です。

しかし、歳出拡大と財政健全化を両睨みで進め、なおかつ日本経済への悪影響を最小限にとどめたいのであれば、単に法人税率の引き上げによって法人税収の増を図るべきではありません。

課税ベースを浸食し、税収減につながる租税特別措置の整理を通じて、全企業の6割以上が法人税を負担していない日本の異常事態を是正し、課税ベースを拡大することこそが最適です。

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