炭水化物は糖質と呼ばれるように、体内で糖に変換された後、正常細胞のエネルギー源として使われます。
がん細胞もまたブドウ糖をエネルギー源としており、正常細胞の約40倍にも上る数のブドウ糖輸送器を使って、とりわけ必要量を超えて変換されたブドウ糖を次々と取り込みます。
炭水化物の摂取量を控えめにして、血糖値を急激に上昇させるような摂取をしないことが必要です。
体内で一気にブドウ糖に変化する白米、小麦粉を使用したパンや麺などをできるだけ避け、白米の代わりに玄米、小麦粉を使用したパンの代わりに全粒粉パンを選ぶなど、グリセミックインデックス(食後血糖値の上昇度を示す指数=GI)の低い食品を摂取すると良いと言われています。
GIが低いと体内における炭水化物から糖への変化は緩やかとなり、血糖値の上昇も緩やかになるのです。
しかも、玄米の糠層や胚芽には、ビタミン、ミネラル、タンパク質、食物繊維などの健康成分も豊富に含まれているのです。
ただし、玄米は体内環境を酸性に傾けるため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につき茶碗に1杯程度)にするとともに、野菜や果物を摂取してアルカリ化を図ることが重要です。
同様に、がん細胞は塩分を取り込み、細胞外の微細環境を酸性化します。塩分の摂取を控えてがん細胞にナトリウムを与えないことが肝要になりますが、塩分もヒトが生きていくためには不可欠の存在です。
厚労省が推奨している健康な人の1日あたりの塩分摂取量は、男性で7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満となっています。また、WHOが推奨している1日あたりの塩分摂取量は男女とも5グラム未満となっています。
しかし、すでにがんにかかってしまった人がアルカリ化食に取り組む場合、塩分摂取量は無塩に近い量が望ましいと言われています。
タンパク質もまたヒトが生きていくためには必要不可欠の栄養素ですが、体のアルカリ化という観点から言えば、牛肉や豚肉などの動物性のタンパク源から摂取することはなるべく控えます。
動物性のタンパク源、中でも牛肉や豚肉、ソーセージなどの加工肉は尿ペーハーを著しく酸性に傾けます。
さらに、牛肉や豚肉や加工肉などを焼いて調理する過程で2つの発がん性物質が生成されることがわかっています。
1つはHCA(ヘテロサイクリックアミン)、もう1つはPAH(多環芳香族炭化水素)と呼ばれる物質です。HCAは肉類を焼いた際にできる黒いコゲに含まれており、PAHは炭などに落ちた肉類の油から立ち上る煙に含まれていますが、いずれも発がん性物質として知られている有害物質なのです。
代わりに、大豆や豆腐や納豆などの植物性のタンパク源からなるべく摂取することを心がけることです。
また、タンパク質を動物性のタンパク源から摂取する場合は、イワシやサンマ、サバやサケなどの青魚から摂取するのが理想的です。青魚にはDHAやEPAなどの必須脂肪酸(ヒトの体内では合成できない脂肪酸)が豊富に含まれ、体内の慢性炎症を鎮める作用があるからです。
鶏卵にはタンパク質だけではなく、カルシウム、鉄分、リンなどのミネラル成分をはじめ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン成分、さらには脂質など、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています。
ただ、鶏卵には1個につきおよそ200ミリグラムのコレステロールが含まれており、摂取量としては1日1個程度に留めておくことが妥当です。
ちなみに、「生卵かけ玄米ご飯」は玄米に含まれるビオチンという成分と卵白に含まれるアビジンという成分が消化管の中で化学反応を起こし、消化不良などを引き起こすことがあります。
しかし、これらの食物の摂取を控えめにしても体内環境はがん細胞が好む酸性に傾いていきます。酸性に傾いた体内環境を中性に戻し、さらにアルカリ性にまで戻すためには、唯一のアルカリ化食品とも言える野菜や果物を多く摂取することが有効です。
とくに野菜の推奨摂取量は1日あたり400グラム程度としています。また、野菜や果物は加熱すると有効成分の一部が分解されてしまうため、多くの野菜や果物を「生のまま丸ごと食べる」ことが良いとされています。
また、野菜や果物にはビタミン類のほか、抗酸化物質も豊富に含まれています。その代表にあたるポリフェノールにはがん発生の原因になる活性酸素を体内から除去するほか、がん発生の原因になる悪玉コレステロールを減らす働きもあります。
緑黄色野菜や果物はビタミンの宝庫と言われています。 脂溶性のビタミンについて言えば、ビタミンAはニンジンのほか、カボチャ、モロヘイヤ、小松菜、トマトなどに豊富に含まれており、ビタミンEはカボチャ、モロヘイヤ、アーモンド、落花生などに豊富に含まれています。
ただし、落花生(ピーナッツ)は体内環境を酸性に傾けてしまうため、避けるのが無難です。 水溶性のビタミンであるビタミンCは、パプリカ、菜の花、ブロッコリー、キウイ、イチゴ、オレンジ、グレープフルーツなどに多く含まれています。
しかも、ビタミンAとビタミンCとビタミンEには相互作用があり、これらを併せて摂取することで効果はさらに増していきます。そのため、相互作用を有するこの3種類のビタミンは「ACE(エース)」とも総称されています。
ただし、ビタミン類はすぐに代謝されてしまうため、朝、昼、晩の3食のたびに補給し続けることが肝要となります。
さらに、ハナビラタケ、干しシイタケ、シメジ、キクラゲ、エノキなど、キノコ類にはがん細胞を攻撃、殺傷する2次免疫(獲得免疫)を高めるβグルカンが大量に含まれています。とくにハナビラタケはその含有量が多いことで知られています。
また、キノコ類に含まれるβグルカンを取り出すためには加熱も必要になります。
すり潰したキノコ類に加熱した出汁を加えて作る「キノコペースト」の摂取が良いとされています。
牛乳、バター、チーズなどの乳製品には、がん細胞の活動活性を上げるIGF-1(インスリン様成長因子)が多く含まれています。よく「体にいい」と言われているヨーグルトもその意味では例外ではなく酸性化食品なのです。チーズやバター、とりわけチーズの酸性化力は強烈です。
したがって、乳製品の生クリームがたっぷりと載った甘いチーズケーキなどは、がん細胞にIGF-1とブドウ糖を与え、かつ、がん細胞周辺の微細環境をがんが好む酸性に傾けるという点で、「最悪の食品」です。
乳製品、とくにヨーグルトなどには、腸内細菌叢、いわゆる腸内フローラを整える効果があります。
発酵食品には腸内細菌叢を整え、2次免疫力を上昇させて、がん細胞の活動活性を抑止する働きもあるからです。
がんや生活習慣病に対してメリットしかない食品や飲料などこの世に存在しません。食品や飲料の持つメリットとデメリットを天秤にかけ、治療効果の上がる最適な組み合わせを選択していくことが重要です。