従業員のエンゲージメントとは仕事への熱意度とも言い換えることができます。
大企業か中小企業かを問わず、世界各国の企業を対象に行った従業員エンゲージメントの調査によると、日本はなんと、「熱意ある社員」が全体の6%しかいないとの結果が判明しました。
アメリカの31%と比べて大幅に低く、調査した139ヵ国の中で第132位とほぼ最下位となっています。
大企業が足を引っ張っていたかもしれないことを考慮しても目も当てられない低さなのです。 あなたの会社の従業員は世界で一番熱意を持っていない、こう言われて大きなショックを受けない経営者はいません。
現在、多くの経営者が従業員エンゲージメントの向上に取り組む必要性を感じ始めていると聞きます。
なお、日本にいるだけでは周りの日本企業の状況も似たり寄ったりですし、忙しい経営者の方々はこのことに気づきづらいかもしれません。
しかし、他の国と比較することで自国の異常さがわかったかと思います。
また、「赤字で生産性も低いから従業員のエンゲージメントが下がるのか、従業員のエンゲージメントが低いから赤字になったり生産性も上がらないのか?」という生産性の低下と従業員のエンゲージメントの低下との関係は最近急に出てきたものではありません。
日本型中小企業経営の長年の蓄積による日本の企業風土や働く方々の仕事観によって生じたものです。
中小企業の規模の小ささに由来する資産形成の不足はもちろんですが、特に近年、人の面と組織の面で、中小企業は構造的な問題を抱えています。
日本はバブル崩壊後の30年間無形資産であるヒトに投資しなかったことで、知識や組織が価値を生む経済には適合できず生産性や成長率の低下を招き、それだけにとどまらず働く人のエンゲージメントにまで悪影響を及ぼす結果となってしまっています。
「熱意はない。ただし、その企業を辞めたいわけでもない」という日本企業で働く従業員のエンゲージメントについてのアンケート結果にはゾッとします。
身から出たサビとはいえ、人や組織の活性化、チャレンジやイノベーションを起こしていくという課題(これが世界の潮流です)が、これからの日本の中小企業経営に重くのしかかっています。
企業全体の99.7%を占める日本の中小企業の生産性は、大企業の3割程度にとどまっています。日本の生産性は主要7ヵ国中最も低く、そして中でも中小企業の低生産性が日本経済の足かせとなっています。
なお、ここまでのいずれのデータも、人口減少前にトレンドが決定しているものばかりです。
少子高齢化により労働力はこの先、急速に低下する見通しです。今、中小企業にテコ入れしなければ「地方の再生」といった目標も実現はさらに難しくなります。
今後、日本は世界でも群を抜いた人口減少国となります。世界全体の人口は増え続ける中、日本は2050年には1億人を切るペースで人口が減少すると予測されています。
成熟した先進国はこれからいずれも同じ道を辿るでしょうが、かつてこれほど急激な少子高齢化を経験する国は、歴史上もありませんでした。
このことから、日本は人口減少における課題先進国と言われています。これは世界からも注目されているほどの本当に危機的な状況なのですが、なぜか中小企業の経営者はそこに対する備えを全くしようとしていません。
高齢化、人口減少、そして労働力不足は、これからの日本の中小企業経営の経営環境に、以下の大きな影響を与えることでしょう。
(1)人口減少による税収減少
(2)労働人口の減少による人手不足
(4)財政悪化による大増税
(5)年金の支給開始年齢引上げ、支給額の減少
(6)慢性的な円安
(7)自給率の減少、慢性的なインフレ
(8)出生率の低下
(3)についてはすでに高い負担率となっており、むしろ税金よりも大きい負担感が感じられ始めています。2050年までには、さらに社会保障費の負担が増加することによって手取りが5割未満になるとも言われています。
(4)については消費税の将来的な増税は既定路線ですし、(5)の年金積立額は現時点ですでに不足しており、今後は加速していくことでしょう。
すでに厚労省では年金の支給開始年齢の引上げや年金の削減案も提唱されているのです。 このような中で将来への不安から出生率が上がることに期待はできません。
人口減少のペースが速まることはあっても鈍化することはなさそうです。人口=国力です。
人口減は日本の国力の相対的な低下につながることから、対外為替は徐々に円安基調になっていくと見込まれる一方、世界の周りの国は人口が増えるわけですから、日本の購買力の低下にかかわらずインフレは進んでいくことでしょう。
手取りは減る一方なのに、負担は加速度的に増え続けていく。これが日本人や日本の企業を待ち受ける未来の姿です。
残された成長資源は家計に2000兆円、企業に1200兆円、あわせて3000兆円と潤沢に積み上げられた金融資産と、世界でも最も優秀とされている「働く人」つまり人的資産だけです。
これらを企業という組織単位で束ねることができ、戦略的に活用できれば日本は成長カーブを描き出すでしょうし、逆に活用できないままでは国としての地盤沈下はいよいよ歯止めがかからなくなります。