怒りは防衛感情であり、大切なものを守るためにある感情です。
怒りが生まれるメカニズムは、ライターを模して説明することができます。
ライターの燃えている炎が怒りです。ライターで炎を燃え上がらせるためには、まず着火スイッチをカチッと押して、火花を散らします。
その火花に、ガスが引火することで炎が燃え上がります。
怒りが生まれるメカニズムに置き換えると、着火スイッチをカチッと押すことになるのは、ごく簡単に言ってしまえば自分が信じている「~べき」が裏切られたときです。
たとえば、自粛をするべき、人の話は聞くべき、仕事はこうするべき、家庭はこうあるべき、そんな発言をするべきでない、といったものがあげられます。
こうした「~べき」は自覚しているものもあれば、無自覚にそう思っているものもあります。
「コロナ禍なのだから自粛するべき」と思っているのに、自粛していない人や店を見てイラッとするのは、まさにライターで着火スイッチをカチッと押した瞬間です。
人は実に多くの「~べき」を持っていますが、「~べき」は自分にとっての理想や願望などを表します。理想や願望なのですから、自分にとって大切なものです。
「~べき」が裏切られることは、自分が大切にしている理想や願望に傷がつくことを意味します。
自分が考える「~するべき」と他人が考える「~するべき」の間にはギャップが存在することを理解することが重要です。
そして、相手の価値観に対して、自分と違う考え方もあることを発見し、何もかも100%を求めないという考え方を持つことが大切です。
自分が怒りを感じるとき、どのような「~べき」が裏切られたことで、怒りの火花が散り、どのようなマイナスな感情・状態が、ガスとして引火しているのか考えてみたほうがよいでしょう。
これが、怒りは防衛感情と言われる理由です。
ここまでであれば、軽くイラッとする程度で済みます。
ところが、時に強く怒ることがあります。それはイラッと火花が散ったところにガスが引火するからです。
引火するガスとなるのが、マイナスな感情や状態です。マイナスな感情は、寂しい、苦しい、悲しい、孤独、不安といったものです。
マイナスな状態は、疲れている、寝不足、空腹、ストレス、身体の具合が悪いといったものがあげられます。
つまり、イラッと怒りの火花が散ったところで、マイナスな感情や状態が大きければ大きいほど、それはガスがたくさんあることを意味し、火花に引火して大きな怒りの炎を燃え上がらせることになるのです。
逆に言えば、マイナスな感情や状態がそれほどなければ、イラッとしても、引火するガスがないので、そこまで大きな怒りの炎になりません。
コロナ禍が続き、先行きが見えないことから不安を感じている人が多く、またニューノーマルと言われる生活スタイルで、ストレスを強く感じている人が多いのです。
これはつまり、マイナスな感情や状態のガスを、いっぱい溜めている人が多いことを意味します。
そのため、以前であれば軽く流せていたようなことでも、引火するガスを溜め込んでいるので、大きく怒りの炎を燃え上がらせる人が増え、そこら中で怒る人が目立っているのです。
怒りを感じるときに感情面だけではなく、思考面も密接に関連していると言われています。
自分の怒りが、どのように生まれているのかを客観的に見ることができれば、今までよりも上手に自分の怒りに向き合うことができます。
自分の力でコントロールできない事柄に怒りを感じても、無駄なエネルギーとなります。このことをスムーズに理解できるようになれば、怒る必要がない場面では怒らないということができるようになります。