日本であれば、「貯金しなさい」 「保険に入りなさい」 そう親から教えられた人は多いと思います。
しかし、マジメにその教えを守った結果、ほぼ資産が増えないまま年を重ねてしまった人が多いのが現実です。
大和総研の調べによれば、保有する金融資産における格差を示す「金融資産ジニ係数」(数値が高いほど格差が大きい)が年々継続的に上昇傾向で、40代後半~50代前半で最も高くなっています。
言い換えれば、資産を増やす「金持ち父さん」と、資産が増えない「貧乏父さん」の差がどんどん広がっています。
お金の常識を若い時からアップデートしていたかどうかで明暗が分かれたのです。
その年齢層の人たちはバブル世代や就職氷河期世代やロスジェネ世代です。彼らが社会に出る数年前までは、銀行預金の金利と保険を組み合わせておけば将来の備えは万全という風潮でした。
小さい時から親から投資はギャンブルであるとしつけられたせいか、社会人になっても投資を敬遠する人がほとんどで、資産運用など考えてもいない人は周りを見てもかなり多いです。
一方で、リーマン・ショック以降からインデックス投資を少額でもコツコツ積み立てていた人は、アベノミクス景気もあり、この10年で平均的に2倍以上に資産を増やすこともできたはずです。
いわば、お金の常識をアップデートできた人は増やせることができ、従来の常識のまま預金や保険にお金をかけていた人は、結果的に機会損失をしてしまったのです。
もちろん、資産とは所得(給料など)の積み重ねで蓄えられるものなので、年収が順調に上がれば銀行預金でも貯蓄できました。
しかし、この十数年は社会保障費や税金が上がり、実質賃金はどんどん減り続けています。
10年前の40~50代よりも今の40~50代の手取り年収は50万円安いというデータがあります。
手取りが減るのに運用に回せる余力は少ないのも現実です。
所得が増えず、運用益も出せないまま年を重ね、今度は教育費や親の介護負担など出費ばかりが増えていくわけです。
大和総研の調べによれば、世帯主が40代の場合、資産がほぼない「金融資産ゼロ世帯」の割合が19%にも上るそうです。
中年世代が歩んできたバブル崩壊後の不景気の最中に就活したロスジェネ世代は、就職氷河期のなかで安定雇用にも恵まれませんでした。
加えて、転職によるキャリアアップも一般的ではなかったのです。社会人のスタートラインの格差が、中年世代まで影響してしまっているのです。
また、東京への一極集中なども、資産格差の拡大に影響しているといわれています。資産を増やすためには、収入から固定費を引いた可処分所得がどれだけあるかが重要です。
東京は住居費を中心に固定費が高い都市です。そしてこの固定費は所得が低いほどに所得に占める割合が高くなるため貯める余力がなくなります。
さらに近年では、似たような年収の結婚相手を求める同類婚志向が広がっています。残酷な言い方ですが、低年収の人は高年収の異性と出会う機会が少なく、結果的に同じような年収水準のカップルが生まれやすいということです。
それらの問題が絡み合い、資産格差が広がっている可能性もあります。
そんな「貧乏父さん」がさらに年を重ねれば、20年後には「貧乏老人」になります。
今よりもお金に困る高齢者が増えたとき、現状の社会保障制度で彼らを支えられるのかは疑問です。