投資による資産形成の成果に目を向けると、この20年でアメリカ人は家計における金融資産を3倍以上にしたのに対して、日本人は約1.5倍となっていて、思ったように増やせずに低迷しています。
あくまでこのデータは投資をしている人のものであって、投資をしていない人の資産は全然増えていないということです。
日本人の間でも投資をしている人と投資をしていない人の間での格差も広がっています。
資産運用はリスクが高いと洗脳されている日本人が好きな保険と貯金ばかりしてきた間に、資産形成に正面から向き合った海外との差は大幅に開いてしまいました。
アメリカだけではありません。イギリスも2倍以上となっていることから、日本だけが増やせていないことがわかります。さらに給料すら上がっていないわけです。
ここまでの差が広がったのは、日本と違い、海外の人々は家庭や学校で金融リテラシーを身に付けて、リスクとリターンのバランスをとる必要性を理解していたようです。
実際、アメリカ人やイギリス人は世界経済の成長に資産を委ねる発想で投信信託をメインにお金を働かせています。
お金を働かせるという発想で、リスクを取った投資をしているかどうかによって海外と大きな差が生まれたのです。
しかも、彼らは単純にお金を増やすことばかりを考えているわけではなさそうです。
海外ではさらにもう一歩進んで、リスクを徹底的に抑えて安全に増やすことを目的とした「ドルコスト平均法による積立投資」という投資手法が広く普及しており、資産形成を安全かつ、確実に行うというステージに歩みを進めています。
日本では失われた30年の中で資産形成に対する考え方が変わるきっかけは、少なからずあったはずですが、残念ながら国民の考え方は、ほとんどが変わっていません。
2000年に入ってライブドアショックやリーマンショックの影響はあったものの、リーマンショック以降の安倍政権によるアベノミクスにより、景気動向指数から見た景気拡大は2018年10月までは続いていたということでした。
つまり日本は2010年代は景気は良かったということなのです。
また、長らくデフレ経済に苦しんできた日本経済は、2013年より日本銀行が「物価安定の目標」というインフレ目標政策に舵を切ることになり、大規模な金融緩和で株が上がりやすい時期だったのです。
にもかかわらず、保険と貯金に明け暮れた人は資産が増えるチャンスを見逃していたわけです。
昭和的価値観である「まずは貯蓄へ」という習慣が思わぬネックになっています。
本人が認知症となり、いざという時に、動かせないケースが続出しています。 自分や家族のために貯金を使おうと思っても、認知症が進行してしまうと口座凍結や契約不能により金融資産に手がつけられない状態になります。
何のために蓄えてきたのか分からないということです。
このことは、本来、市場に出回り経済を動かすはずだった資産が止まっていることを意味します。 日本の現状は言わば、血液(資金・おカネ)の体内循環(日本経済)に支障をきたしているのです。
貯蓄が日本経済に還元されないため、市場に資金が流れなくなります。
もし、政府が本気で内需拡大を考えるのであれば、この血液が上手く流れる政策を取るべきです。
老後にいくら必要などといった議論は、メディアを喜ばせ国民の将来への不安をますます煽るだけです。
どうすれば高齢者の資産を円滑に動かすことができるのか、真剣に考えなければなりません。認知症社会と経済政策とは、表裏一体です。
こうして日本は世界でも有数の金融資産を持つ優位性を活かすこともないまま、資産形成の後進国と成り下がったのです。