昭和に入ってから企業の定年は55歳が一般的でしたが、1980年代に60歳に引き上げられ、今や65歳までになりました。
当然、企業も年々高齢化しています。東京商工リサーチによれば、2020年3月期決算の上場企業1792社の従業員の平均年齢(中央値)は41.4歳と過去最高齢になりました。
では、ベテラン社員が増えたことで、日本企業の競争力が高まったかというと残念ながらそんなことはありません。
ベテランが活躍するのは、「下町ロケット」的なフィクションの世界だけで、現実は経験値のあるベテランの割合が増えれば増えるほど日本企業の競争力は落ちています。
世界の時価総額ランキングで、かつては上位に食い込んでいた日本企業は高齢化とともに続々と脱落し、50位圏内に残っているのはトヨタ自動車のみです。
どんな企業が競争力が高いのかというと、「若い従業員の多い会社」です。
GAFAなどシリコンバレーのテック企業などは、従業員の平均年齢は30代で、日本の上場企業より10歳若いのです。
とはいえ、シニア人材は全て使い物にならないわけではありません。企業でキャリアを重ねた後に独立し、活躍されているシニアは世の中にたくさんいます。
蓄積した知識や経験で、自分の人生を切り拓くという点で、シニア人材は若者に比べて遥かに優秀です。
しかし、その能力を「組織にしがみつく」方向へ用いると途端におかしなことになります。
つまり、社員がシニアになるまでしがみつくというマインドが強いような組織は成長ができません。
ちょっと考えれば当然のことですが、定年まで会社にしがみつく人は、最終的なゴールは無事にその日を迎えることなので、どうしてもリスクを取れません。
社内政治では長いものに巻かれるし、身を切るような改革はどうにかして避ける傾向が強いのです。
人間というのはどうしても組織に長くしがみつくと、既得権益を享受することがやめられなくなって、後進の若い世代にとってマイナスの存在になってしまうということです。
この現象を、日本では古くから「老害」という言葉で戒め、組織の「病」をどうにか克服しようと長い戦いを続けてきました。
どれくらい古くからというと大正時代からです。老害は世界で見られる人類共通の「病」です。
終身雇用という制度が急速に普及した近代日本では、それがより深刻な問題となっています。
そこで、シニアの暴走を防ぐために「定年制」が設けられた側面もあったのです。
しかし、今の日本では少子高齢化を理由に、その「老害防止システム」が無力化されて、大正時代に逆戻りしています。
日本は100年前から変わらぬ安定の「老人支配」が続いています。二階氏や麻生氏のような政治家を見ても分かるように、80歳を超えても引退するつもりが全然ない耳の遠い頑固なおじいちゃんが増えています。
政府も「健康寿命が延びているので、年金をもらっても死ぬまで働くべきだ」と旧ソ連のようなことを言い出しています。働いて稼いでいる人は年金はいらないと思います。
「70歳就業法」で老人支配がさらに強まるのは間違いありません。今までは嫌な上司は定年で目の前から消えてくれたのですが、影響力を持った状態でずっと居続けるわけです。自分にとって相性の合わない人なら、なお最悪です。
日本の若者世代の受難はまだまだ続きそうです。