会社自身が社会福祉団体である日本では、終身雇用を建前にして、リストラしにくい状況にあります。
そこで雇用を守る代わりに、ある程度の賃金カットは耐え忍んでもらうことになり、日本だけが先進国の中で唯一賃金が下がっている要因です。
終身雇用制度を採用している国はほとんどありません。中国の国営企業ですら、1990年代には終身雇用をやめたほどです。
こういうことを言うと、終身雇用が日本の強さのヒミツだったと言い出す人たちもいます。
「企業は人なり」というお約束の格言と、松下幸之助が登場して、日本企業は社員を大切にして社員は会社に人生を委ねたので、一体感ができてみんな汗水たらして働いたことを美徳化しています。
身分保障されていたので、心置きなく消費もできたということだそうです。
しかし、終身雇用というのは、民間で生まれたものではありません。
1939年に制定された「国家総動員法」のなかにある「会社利益配当及資金融通令」や「会社経理統制令」で株主や役員の力が剥奪され、国のコントロールのもと、戦時中、とにかく生産力をあげるために企業という共同体に国民を縛り付けておくひとつの手段として始まりました。
さらに言えば、日本人の発明ではなく、世界大恐慌を何とか乗り切ったソ連の「計画経済」を真似したものです。
国が経済発展を計画的に進めて、国民は国が規制をする企業に身を投じて一生涯同じ仕事をする。そういうソ連モデルが日本人にはフィットしたのです。
日本は、皮肉にも世界で最も成功した社会主義と言われています。
要するに「終身雇用」は日本式経営でもなんでもなく、単に戦時体制につくられた社会主義的システムをズルズルとひきずっていただけです。
そして、実際には形骸化している終身雇用に安心感を持ち、低賃金も喜んで受け入れてきた、というのが日本人の正しい姿です。
しかし、小泉改革、アベノミクスなどの新自由主義経済が流れ込むと、ソ連のように崩壊していきます。
さらには、そういう思想をもとに築き上げられたインフラなんかも音をたてて崩れていきます。
日ソ両国がともに原子力を制御できず、福島やチェルノブイリで大きな失敗をしたのは単なる偶然ではありません。
そういう負の遺産を見れば、もう既に「終身雇用」が終わっているのは明らかです。
ただ、世の中にはそれを認めたくない人たちが意外と多いのです。
例えば、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が2018年5月に発表した調査では「終身雇用」を支持する者の割合は過去最高の87.5%となったそうです。
「組織の一体感」「年功賃金」を支持する割合もそれぞれ過去最高になっており、特に20~30代がグーンと伸びたそうです。
最近の若者は死ぬまで雇われたいという思いが年々強くなっています。
子どもは親の背中を見て育つということでしょう。
ネトウヨが増えている、右傾化しているなんて心配している人も多いらしいですが、社会主義の教えは、今もしっかり日本人に刷り込まれてます。
愛国だ、日本は世界一と叫びながら、経済に対する考え方はどんどん左傾化しているのです。岸田内閣が支持されている理由がそういうことでしょう。