岸田首相は経済政策を「新しい日本型資本主義~新自由主義からの転換~」と銘打っています。 これは成功した金持ちは許さないという政策です。株などで儲けた金は皆に均等に分け合えということでしょう。
これでは誰も競争せず、頑張らず、やる気のない社会になってしまいます。
格差拡大を是正しようということは理解できますが、経済成長もできない国で金持ちを引きずりおろして全体の所得の平均値を下げ、国民を総貧乏にさせようとするやり方に問題があるのではと思います。
将来不安を解消したり、老後のために普通のサラリーマンや年金生活者も株式投資はやっているわけです。株は富裕層だけやっているわけではありません。
預金以外で老後資金を貯めるなら、低金利時代では金融所得しかないわけです。
既に税制改正で令和6年度から住民税は、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させられました。庶民に対する実質増税です。
年金生活者やセミリタイアした人にとって、配当金を総合課税で申告すると、次年度の国民健康保険料が跳ね上がるため、配当控除をする意味が無くなります。
新しい資本主義の内容を見ると、具体的に「成長と分配の好循環」を通じた格差縮小を重視しており、給料を上げた企業に、税を優遇するなどして分配を促すとして、看護師、介護士や保育士の待遇改善も進めるそうです。
給与増は可処分所得の増加となり、消費を喚起する可能性がありますが、市場が懸念するのは成長よりも分配を重視することです。
分配を優先すると、経済が委縮する懸念もあります。 企業は利益の増加が見えないのに給与増を求められれば、本来必要な投資や配当を減らすなどの可能性もあります。株主を軽視する方向に持っていくということです。
金融所得課税とは、株式譲渡益(キャピタルゲイン)や配当金(インカムゲイン)などの金融所得に課される税金で、現在の税率は一律20%(所得税15%、住民税5%)となっています。
岸田首相は金融所得課税の見直しを棚上げしており、市場では「早ければ2023年度税制改正で、一律20%の税率を引き上げる案や、富裕層の負担が重くなるように課税を強化する案などを議論する可能性がある」と警戒しています。
アベノミクスと違うのは市場が期待していないということです。金融所得課税は岸田首相が掲げる目玉政策だけに、いずれ実施に向けて動き出す可能性があります。
アメリカのように所得が1億円以上の富裕層などに限定する必要があると思いますが、ただこれにすると税収は少ししか増えません。財務省は累進的な増税は絶対しないと思います。
株式投資をしない人からすれば、「株式投資をしている人は富裕層」「余裕資金でやっているのなら金持っているだろう」という誤解が生じると、一律増税に進むことも考えられます。
日本の家計が投資に回している平均は金融資産の13%、対してアメリカでは約半分もの割合を株式や投資信託で運用しているというデータがあります。
このデータから見ると日本人の一部の人しかしていないということになりますので、少数派が増税のターゲットにされていることは事実です。
個人投資家にとって、キャピタルゲイン課税の増税も痛いですが、配当に係る税率アップはなお厳しいです。投資家の株式離れが、想定外の株価下落を招くことも排除できません。
さらに約200兆円の年金積立金がGPIFで運用され、国内債券と国内株式が占める割合はおよそ50%、約100兆円もの年金資金が国内の金融市場に投下されています。株安によるGPIFの運用益減少は、将来の年金にダメージを与えることになります。
老後2000万円問題を契機に、政府は貯蓄から投資へ進めてきたはずでしたが、政権が変わって投資から貯蓄への政策になってしまいました。
相場の格言で「国策には逆らうな」「国策に売りなし」とありますが、今回の国策そのものが売り材料ですから、政権が変わるまで耐え凌ぐしかないです。