日本の労働生産性はOECD加盟38カ国のうち23位で、前年から2つ順位を落とし、比較可能な1970年以降で最も低かったようです。
コロナ禍で経済が大幅に縮小した中、雇用調整助成金などにより雇用維持を重視したことが生産性を下押ししたそうです。
1年近くお金貰って生きていた多くの人たちがいたわけですから、このまま沈んでいくのでしょう。
生産性の伸び悩みにはいろんな要因がありますが、その1つが硬直化した産業構造です。
日本の産業界では、元請け企業が下請け企業に発注し、下請け企業はさらに孫請け企業に発注するという重層的な下請け構造があります。
役割分担に応じて適切な産業構造を形成するのであれば何の問題もありませんが、このことが目的化されてしまうと著しい非効率化を招きます。
日本はアメリカと比較して人口あたりの会社数が2割も多いです。人口比で会社数が多いということは企業規模が相対的に小さく、中小企業で働く労働者の比率はアメリカよりも高いということです。
つまり、日本は人口比で会社数が多い原因の1つが中間マージンを取ることだけを目的にするムダな事業者が存在することです。
元請け、下請け、孫請けの企業の分だけ人件費が余計にかかります。各企業は利益を上げる必要があることから、再委託されるたびに業務の付加価値は減っていきます。
流通でも似たような現象が起きています。日本の流通コストは諸外国よりも高いとされていますが、その理由は卸売販売会社の数が多過ぎ、多くのムダが発生しているからです。
中抜きを排除するなど産業構造をシンプルにするだけで賃金は大幅に上昇し、余剰となった労働力が他の生産に従事すれば、GDPの絶対値も増えます。
アメリカは日本よりも人口当たりの企業数が少ないですが、アメリカと同レベルの生産性を誇るドイツは日本並みの企業数で、中小企業の比率も高いです。
しかしドイツの中小企業の利益率は大企業と同等か、むしろ高くなっており、中小企業=低付加価値にはなっていません。
日本の問題は付加価値の低い中小企業が多いことであり、その原因の1つがこうした産業構造にあると考えられます。
人口減少などにより廃業やM&Aで必然的に数は減っていくのでしょうが、政府系事業はもとより、民間でも再委託の慣習や手数料ビジネスは可能な限り排除しないと未来永劫経済成長せず給料も上がらないでしょう。